2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730314
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
森谷 智子 嘉悦大学, 専任講師 (00449365)
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Keywords | ABL / セキュリタイゼーション / 地方銀行 / 中小企業 / 証劵化商品 |
Research Abstract |
サブプライム問題の表面化、そしてCDSの取引が発端となった金融危機の煽りを受け、日本における金融機関や大企業は当初資金調達難に陥ったものの、現在、資本市場も落ち着きつつある。しかしながら、証券化商品市場は信用力および発行額が低迷している。そこで、日本における証券化商品市場の再推進のために、どのような施策が残っているのであろうか。そこで、中小企業の新たな資金調達手段であるABL(動産担保融資)が証券化商品の裏付け資産になりうるものなのかを検討することが目的であり、具体的な内容である。 そもそも、ABLとは、企業が保有する動産、たとえば売掛債権、在庫、機械など、即座に売却できる動産を担保に金融機関が企業に融資する手法を意味している。こういった担保資産が付与された貸付債権を証券化商品のプールに組み込むことにより、リスクが低減された金融商品を組成することができるのではないかという考えをもとに、ABLの実態調査を実施した。その結果、ABL自体を推進していくうえで、さまざまな問題があることが明らかになった。 ABLは、借手にとって、通常融資よりも金利が高いというデメリットがある。また、貸手である金融機関は、通常融資よりもリターンが得られるものの、多様な担保のモニタリングを実行しなければならないということから、コストが掛かり過ぎる融資手法にもなり得る。また、動産の価値を評価する専門機関が少ないため、鑑定料なども高額になることから、金融機関や企業がABLに積極的に取り組むことができない、という問題点もある。 近年、リレーションシップ・バンキングの強化、地域密着型金融の推進が求められている。その活動の一つとして、ABLも含まれている。ABLは、中小企業のお金の流れを把握するため、そして在庫などの価値を評価するためには有効的な手段でもある。しかしながら、ABLは従来の譲渡性担保融資となんら変わらないという意見もある。また、ABLは換金性が高い動産を担保にしているが、機械、在庫、野菜などの担保を登記することは不可能であるという。つまり、金融庁がABLの取り組みを後押ししたものの、それを実行する環境が整備されていないということになる。そのため、地方の金融機関は、ABLに積極的に実施できない状況が続いているという状況が、今回の調査を通して明らかになった。今後、ABLを推進していくためには、金融庁が動産担保を登記できるようにすることが条件として挙げられる。現在、動産担保として登記できるのが、牛に限定されている。そのため、ABLに取り組むことができる業種が限定され、中小企業の資金調達手段としては、定着しないことになるであろう。近年、様々な資金調達手段が活用されているが、一時的な解決策、貸し渋りの対応策としてのみ活用され、定着しないうちに新たな資金調達手段が紹介されるのが現状である。今後、ABLを推進していくためにも、動産の登記に関する問題を解決することが重要であることなど、重要な手掛かりを得ることができた。この問題を解決しないことには、証券化商品市場の再活性化には結びつないものと考えられる。
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