2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア3カ国・地域の経済環境における華人企業の戦略構築に関する比較研究
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22730318
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
守 政毅 立命館大学, 経営学部, 准教授 (00434704)
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Keywords | 華人企業 / 戦略構築 / 東アジア / 香港 / シンガポール / マレーシア |
Research Abstract |
平成23年度は、「香港における華人ネットワークの連結機能に関する研究」と「香港企業の競争能力構築と戦略策定に関する実証研究」の2つを研究テーマに研究を進めた。 まず前者は、華人の社団ネットワークの連結機能に関して、香港中華総商会を研究対象とし、その年間事業活動と理事の連結機能に着目した分析を行った。香港中華総商会では、理事が香港華商を束ねながら、「近距離交流」が盛んに行われている。華人ビジネスネットワーク内では、「関係」の規範によって、華人企業間で資源や情報の互恵的交換が行われる。香港中華総商会とその理事は、コネクター・ハブとして外地との「構造的な溝」を埋めて、「遠距離交流」の「関係」を連結する。それにより、香港外との地域間ネットワークが連結され、遠距離の「関係」を通じて香港華人企業に「近隣効果」が生まれるようになる。その結果、香港企業は、地域の企業間ネットワークを構築し、資源、資産の互恵的交換が可能となることを明らかにした。 加えて、香港企業の最大手である長江実業集団を研究対象に、不動産のデベロッパー機能に着目した競争能力構築と戦略策定について、経営戦略論の視点から実証研究を行った。香港経済は、1980年代以降に英国から中国へと統治が移行する中で英国資本が引き上げ、委託生産の製造業から不動産、運輸、金融、サービス等の第三次産業へと転換した。長江実業グループは、創業者の李嘉誠の果敢な企業家精神と独自のビジネスネットワークを駆使しながら、リスクを恐れず転換期のビジネスチャンスを掴み、プラスチック造花から不動産、運輸を中心に事業を次々と拡張させることで、経済環境に適応する戦略構築能力を蓄積したことを確認した。 これらの研究成果により理論づけを強化するに至り、関連する学会や国際会議で報告を行ったほか学内誌に論文を投稿して、広く社会に公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「アジアの華人企業を対象に、経済環境に適応する戦略構築能力の構築について経営的特徴を明らかにする」という目的に対して、社団ネットワークを活用した華人企業家の環境創造と資源獲得の可能性を明らかにするとともに、香港の代表的華人企業を対象た、香港のマクロ経済環境と華人企業家が持つ経営資源を活用した環境創造と競争能力の構築を通じて戦略構築能力を蓄積する理論的分析枠組みを精緻すすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成22~23年度の研究成果であった「華人企業の経済環境に適応する戦略構築能力の構築」を分析する理論的枠組みを援用し、これまでの香港に加えてシンガポールとマレーシアの華人企業事例を研究し、比較検討得することで、アジアの華人企業を対象に、経済環境に適応する戦略構築能力の構築について経営的特徴を明らかにする。そのために、平成24年度は資料収集を継続すると同時に、夏季に東南アジアで現地調査を行って、成果をまとめる。
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Research Products
(5 results)