2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730337
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
谷口 葉子 宮城大学, 食産業学部, 助教 (60507432)
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Keywords | 有機農産物 / 一般的信頼 / 流通チャネル / 開閉基準 / 価格プレミアム |
Research Abstract |
平成22年度は文献調査と聞き取り調査により、有機農産物の生産・流通現場における信頼形成のあり方を整理した。また、有機野菜の価格の水準や変動の整理を行い、慣行栽培および特別栽培のものと比較した。 聞き取り調査は量販店を含む多様な小売り形態へ向けて有機農産物を出荷する流通業者2社、農業生産法人2社を選定した。聞き取り調査の結果、有機農産物の生産者と流通業者の関係性は近年変化しつつあることが確認できた。第一に、これまで有機農産物の主要な小売媒体であった宅配等の「閉鎖的な」チャネルにおける売上が停滞し、従来取引のなかった「外部」への販売が重要性を増している点である。第二に、従来のように生産・販売予想に基づく作付段階での契約で生じる需給のミスマッチが増大し、フードチェーンの川上においてより大きなリスク分担が求められるようになってきている点である。第三に、量販店における有機農産物の販売は、その取扱い姿勢により販売量の動向に差異が生じつつある点である。第一と第二の点は、有機農産物の流通において、取引当事者間で確実に売買が行われるという従来の安心感が部分的に崩壊しつつある中で、双方の信頼関係をより強固なものにする必要性に駆られている事を示している。第三の点は、販売現場における明確な差別化や量的な安定性が有機農産物の売上動向に影響を与える可能性を示唆していた。 農林水産省の生鮮食料品価格・販売動向調査の結果を用いて有機野菜の価格水準・変動幅を整理し、慣行栽培品と比較した結果、有機野菜の価格は平均して70%高く、変動幅も30%程度大きいことがわかった。販売数量を従属変数、価格・所得を説明変数とした重回帰分析では十分な説明力が観察されなかったが、概して高い価格弾力性を示していた。また、金融危機後の経済の停滞を表わすダミー変数を用いたところ、数量の減少に有意に作用していることが確認できた。
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