2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730349
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 康弘 東北大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (70451507)
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Keywords | 管理会計 / 先行指標 / コミットメント / 非財務業績指標 |
Research Abstract |
本研究の当初の目的は,プリンシパル・エージェント・モデルのひとつである不完備契約を用いて,生産キャパシティの拡張に関わる経営者の行動と,業績評価の問題を分析することであった.そのため,平成22年度は不完備契約のモデルについて,会計分野を中心に先行研究のサーベイを行ってきた.平成23年度はまず初めに,このサーベイの結果を論文「非財務業績指標の研究」にまとめた. 先行研究のサーベイを進めるにつれて,契約のコミットメントの種類によって,問題の解き方が変わること,またコミットメントについての仮定によって,分析している問題にどういった要素が含まれる得るかが変わることが分かったきた.この研究で扱ったのは2期間のプリンシパル・エージェント・モデルだが,先行研究によると,3種類のコミットメントについて厳密に仮定を置く必要がある.そのうち,経営者が2期目の初めに1期目に働いていた企業を離れる自由に関するコミットメントに注目し,その後の研究を進めることとした.多くの先行研究のモデルでは,暗黙にこのコミットメントが仮定されていた.つまり,1期間の契約についてしか合意しなくても,経営者は2期目も同じ企業で働くことが暗に仮定されていた.論文"Managerial Retention Cost, Manager Specific Effort and the Use of Leading Indiactors"はこのコミットメントが存在しない状況で,先行指標を用いた業績評価のあり方と経営者の努力インセンティブの強さを分析したものである.また,経営者を2期目もとどまらせるための支払を行う機会が存在し,その支払にコミットできることを仮定して,その支払額と努力インセンティブの強さの関係について分析した.この研究は,以上の2点で会計分野では新しい問題を扱ったものであり,先行研究と異なる.
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