2011 Fiscal Year Annual Research Report
企業の合併・買収は投資家の期待する経済効果をもたらしたか?
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22730358
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
高橋 美穂子 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (20438104)
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Keywords | 会計学 / 株式公開買付(TOB) |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究では、株式公開買付を通じた企業再編が資本市場でどのように評価されているのか、特に資本関係にみる買収対象企業の経営統合化の度合いが、この評価にいかなる影響を与えているのかを検証した。具体的には、株式公開買付案件のうち完全子会社化を目的とするものと、完全子会社化を目的としないものを区別し、両者の間で株主価値に与える影響が異なるか否かを検証した。 分析結果から、次の点を確認した。第1に、株式公開買付を公表した買付企業の累積超過リターン(CAR)はゼロと有意に異ならないものの、株式公開買付案件の中でも完全子会社化を目的とする案件では、有意な正の値を観察した。第2に、対象企業のCARは、完全子会社化を意図するか否かに関わらず、いずれの場合でも有意な正の値となったが、完全子会社化の対象となっている場合には、より大きな正の値を観察した。ただし、分析結果は首尾一貫しておらず、対象企業のCARは買収プレミアム、買付株式比率、事前持株比率や企業規模など、完全子会社化を目的とした案件か否か以外の要因の影響を受けていることを一部の分析結果は示している。第3に、買収企業・対象企業の両者加重平均CARは、有意な正の値を示しており、このことは株式公開買付が当事者企業全体としての株主価値の創造に貢献していることを示唆している。ただし、この結果は完全子会社化案件によってもたらされたものであり、資本市場が当事者企業全体の価値創造に貢献していると評価しているのは、株式公開買付案件の中でも経営統合度の高い、完全子会社化を意図した案件に限定されることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
株式公開買付公表時の株価反応の検証(具体的には経営統合化の度合い、すなわち完全子会社化を目的とした案件か否かが株主価値に与える影響)に焦点を当てた分析を実施していた為に、株式公開買付実施後の株価効果の分析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施してきた研究では、合併・買収取引の中でも株式公開買付に焦点をあてて、株式公開買付公表時の株価反応を検証してきた。今後の研究では、株式公開買付実施後の株価効果の検証を行う。具体的には、株式公開買付実施1年後、2年後、3年後の株価反応を観察し、それを公表時の株価反応と比較することで、投資家の期待する経済効果が達成されているのか否かを検証する。
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