Research Abstract |
環境経営に取り組む企業において,環境会計,特に環境管理会計はどのような役割を果たすのであろうか。また,環境会計を活用して環境経営を進める中で,企業の組織はどのように変化するのであろうか。これらを明らかにすることが,本研究の目的である。この目的を達成するために,分析フレームワークの構築と,分析対象企業のパイロット調査が,第1年度の課題であった。 分析フレームワークを考える上で,まず検討対象としたのが,Laughlinが提示した組織変化モデルであった。このモデルは,組織を設計原理,サブシステム,解釈スキームで構成されるものと見なし,組織を取り巻く環境が変化したときに,組織を構成するこれらの要素がどのように変化するかを明らかにすることで,組織変化を捉えようとしたモデルである。このモデルは,環境問題に取り組む企業の組織変化を対象としたいくつかの先行研究においても採用されていることから,Laughlinの組織変化モデルと,このモデルを用いた環境会計研究をレビューした。その結果,環境問題に取り組む中で,設計原理やサブシステムの変化は見られるものの,解釈スキームが変化する企業は見られなかった。また,このような組織変化において,環境会計はほとんど影響を与えていないことが指摘されていた。これらの先行研究が実施された時期は1990年代後半であり,その後環境会計,特に環境管理会計手法が発展していることを考えれば,環境経営における環境管理会計の役割は大きく変わっているはずである。こうした先行研究レビューをもとに,現代の企業分析にあった分析フレームワークをさらに検討する必要がある。
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