2011 Fiscal Year Annual Research Report
国際会計基準のコンバージェンス・アドプションと業績報告に関する実証研究
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22730376
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
若林 公美 甲南大学, 教授 (20326995)
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Keywords | IFRS / 国際会計基準 / 業績報告 / 包括利益 / 公正価値 |
Research Abstract |
本研究では、会計基準のグローバル化の流れのなかで、国際財務報告基準(lnternational Financial Reporting Standards: IFRS)とのコンバージェンス・アドプションによる影響が著しい、包括利益と公正価値の問題に焦点を当てている。本年度は、日経メディアマーケティング社の日経Financial Questから、包括利益情報とその他の包括利益(Other Comprehensive Income:OCI)の個別項目である為替換算調整勘定、その他有価証券の評価差額金、繰延ヘッジ損益に関するデータ・ベースの作成を行い、次年度の分析に備えた。 また、IASBは、包括利益計算書のフォーマットについて、営業活動と財務活動に区分して、表示することを提案していることから、IASBの提案する業績報告が、将来キャッシュ・フローの予測などに有用であるかどうかについて、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board: IASB)と米国財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board: FASB)の公表する基準書を中心に論点を整理した。 さらに、包括利益の算定に大きな影響を与える公正価値について検討した。公正価値を重視するアプローチは、IFRSの特徴であり、公正価値による測定結果として生じる評価差額(いわゆる時価評価差額)の期中変化額が、純利益や新たなボトムラインである包括利益の算定に含まれる。特に、わが国では1999年に持合株式がその他有価証券に分類され、その公正価値評価(時価評価)が義務付けられた。そして、その評価差額が包括利益に算入されることになった。そのため、公正価値評価が義務付けられた1999年以降、持合の解消、すなわち有価証券の売却が進められた。このように、投資有価証券が公正価値で評価されることにより、投資有価証券に関する企業の売買行動が、景気循環を増幅させるかどうかに関する分析を行った。その結果、すべての企業が景気循環増幅効果をもたらすような有価証券の売買行動に従事しているわけではないが、有価証券の売買を積極的に行っている企業や業績のボラティリティが激しい企業については、そのような関連性を裏付ける証拠が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際会計基準のコンバージェンスとアドプションの影響の大きい、包括利益、業績報告、公正価値の問題について、データ整備、先行研究のレビュー、実証分析をそれぞれ行っているから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、包括利益についてデータ・ベースが完成したものについては、分析を行う予定である。業績報告に関する先行研究のレビューについては、論文として発表する予定である。公正価値の分析に関しては、モデルの改良や精緻化のために、海外の学会で報告する予定である。
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Research Products
(1 results)