2011 Fiscal Year Annual Research Report
世代間所得移動の推定と国際比較研究からみた日本における機会の平等・不平等性の評価
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22730382
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 崇 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (80455774)
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Keywords | 世代間所得移動 / 機会不平等 / 国際比較 / パネル調査 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本における機会の平等/不平等を、世代間所得移動の推定によって測定し、国際比較の観点からその水準を評価することである。世代間所得移動とは、親と子の所得の関連の強さを測定したもので、機会不平等度の指標としても用いられている。近年、ジニ係数や貧困率で測定される結果不平等の拡大が注目を集める中、機会不平等に対する関心も高まっており、所得移動の実証研究も急速に増加している。その中で、日本に関しては利用可能なデータがなかったため国際比較の中に位置づけることができなかった。本研究はこの欠落を補うことを目指している。 平成23年度の研究成果は、(1)日本における所得移動の分析結果を2005年SSM調査の成果の一部として一般書として公刊したこと、(2)日仏共同研究の一環として日本における所得移動の趨勢分析を行い、英文ジャーナルに投稿したこと、の2点である。(1)は石田浩ほか編『現代の階層社会2階層と移動の構造』(東京大学出版会)の第2章として出版された。ここで得られた主な知見は(a)日本における世代間所得弾力性は国際的にみて中くらいの水準である、(b)1985年から2005年にかけて親子間の所得の関連が強まったとする証拠はない、(c)父所得による子の教育機会格差はコーホート間で縮まっていない、というものであった。これらの結果はおおむね社会学における世代間社会移動(職業階層移動)の研究とも整合的であった。(2)は投稿済みで、現在、査読者のコメントに基づいてリライト中であるが、THEMAのディスカッション・ペーパーとして公表している。この研究の意義として、所得決定のメカニズムが時代によって変化した可能性を考慮していること、Ueda(2009)の日本における世代間移動の結果と比較しているごと、世代間所得移動を男子だけでなく女子も含めて行ったこと、が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究者との連携がうまくいっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
日米比較分析の結果をまとめ、学会発表および論文投稿を行う。また、最終年の研究成果の取りまとめとして、各国で行われた世代間所得移動の実証研究について報告書にまとめる。
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Research Products
(5 results)