2011 Fiscal Year Annual Research Report
トヨタ生産システムの地域企業への導入過程と定着実態
Project/Area Number |
22730389
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊原 亮司 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (60377695)
|
Keywords | トヨタ生産システム / 地域社会 / 労働現場 / 力関係 / 下請企業 |
Research Abstract |
トヨタ生産システム(TPS)は、経済合理性の観点から高く評価されてきた。フォード生産システムに比べて、環境変化への適応力が高く、現場から組織を「変革」し、労働者から「やる気」を引き出すシステムとして考えられてきた。そして、この技術優位性により、TPSは世界規模で浸透するものと想定されてきたのである。 しかし、地域社会に導入された事例を観察すると、TPSの導入先には多様性があり、産業・企業規模・商品特性・企業を取り巻く環境により、定着の仕方は大きく異なることが明らかになった。 カンバンシステムとは、あくまで一定の生産量(平準化)を前提として「微調整」の役割を果たすにすぎない。しかし、取引先との力関係が弱い小規模企業は、取引先に平準化をお願いしにくい。また、生産があまりにも多品種で少量の場合は、カンバンシステムを導入すると、システムが煩雑になりすぎて、かえって生産性が下がる。これは一つの事例にすぎないが、各企業は特殊性を抱えており、トヨタのようにはTPSが導入・定着しにくいことが分かった。もっとも、トヨタからすれば、その特殊性を踏まえて、独自のTPSを構築すべきであるというだろうが、そこまでの力量とエネルギーを持てない企業の方が世の中には多いのである。それ故に、TPSは導入したものの、根付いていない企業が少なくないのだ。 逆に、経営者の中には、TPSの導入にリーダーシップを発揮し、生産量が少ない時は、従業員教育に時間を割き、全社員でカイゼン活動に取り組んでいる企業もあった。 本年度の調査により、TPSの定着は、企業が置かれた状況や経営者のリーダーシップ、他の管理制度との整合性により大きく変わってくることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査対象者が全面的に協力してくださるため、当初の計画を超えて、順調に研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
地域企業との協力関係を維持し、今まで通りに研究計画を進める。
|