2010 Fiscal Year Annual Research Report
アルヴァックスの階級論から集合的記憶論への連続性に関する研究
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22730401
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
横山 寿世理 聖学院大学, 政治経済学部, 助教 (00408981)
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Keywords | アルヴァックス / 集合的記憶 / 記憶の社会的枠 / 階級論 / 集合的保存 / 労働者階級と生活水準 / 原爆文学研究 |
Research Abstract |
アルヴァックス集合的記憶論の学説研究と学史研究という二つの側面から研究を進めた。その研究目的は、集合的記憶の「保存」作用について明らかにすることであった。アルヴァックスが集合的記憶よりも先に階級論についての研究を行っていたことから、学説的にも学説史的にも、階級論と集合的記憶論の連続性を確かめることで、集合的な保存の作用を浮き彫りすることを模索した。平成22年度は、この予想にしたがって、図書収集と『記憶の社会的枠』『労働者階級と生活水準』の読解を行った。 すでに研究実績として、集合的保存という側面が集合的記憶論には含まれていたのではないかという可能性については、「アルヴァックス集合的記憶論再考」(『社会学史研究』第32号)にまとめている。同論文において、階級論と集合的記憶の学説的・学史的研究を深めていく必要性を改めて確認することができただけでなく、本研究の意義を明らかにするためにも集合的保存論と現代的な社会問題との関わりを指摘することも必要であることがわかってきた。 現代的な社会問題との関連でいえば、すでに集合的保存論と考えられるような研究が、特に被爆者への体験聞き取り調査の中などで指摘されている。被爆体験の世代間継承に関わる研究は集合的保存の典型的な事例であると言えるだろう。 そこで、今後は当初の研究計画であった階級論と集合的記憶の関わりだけでなく、原爆文学研究を集合的記憶と捉えることで、集団内の過去の体験が現在・未来へと継承される過程で生じる集合的保存を明らかにするという本研究の目的を果たすことが必要になるだろう。
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