2011 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本における子ども・教育を鍵とする社会像の再検討:揺らぎの事例を中心に
Project/Area Number |
22730411
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
元森 絵里子 明治学院大学, 社会学部, 講師 (60549137)
|
Keywords | 社会学 / 教育社会学 / 歴史社会学 / 子ども論 / 教育システム / 社会化 / 児童労働 / 飲酒 |
Research Abstract |
本研究は、「子ども」とその教育が社会の存立にかかわるという、日常知のみならず社会学も前提としてきた感覚の成立と展開(歴史性と社会性)を社会学的に分析するものである。2年目に当たる本年度は、昨年度に引き続き、戦前と現代を中心に資料収集を行ったが、その結果、申請時の予定よりも、年少者を社会の存立にかかわり教育すべき「子ども」とは異なる形で見る視線が残っていた戦前期の具体的記述に力を入れることとなった。 1.戦前期の子どもと教育をめぐる言説の収集・整理 教育と他の制度領域との関係性に焦点をあて、戦前期に「子ども=教育」どいう前提が広がっていく中で、年少者を別様にまなざす見方とどう調停されてきたかを法制度史料等から分析した。具体的には、貧困層の就学問題、工場労働、喫煙・飲酒問題を扱い、論文として公表した(校正中含む)。そのほか、社会教育(大人・労働者の学習)や児童生徒の戦時動員に関する史料を収集し、公表に向けて分析を進めているところである。 2.近年の子どもと教育をめぐる言説収集および事例研究 1の戦前期の分析と比較しつつ現代を検討することを念頭におき、教育と職業世界のトランジション研究や生涯学習論、未成年の飲酒・喫煙問題等の資料を収集した。また、生涯学習の事例研究に向け、習い事や生涯学習を楽しむ成人への聞き取り調査を進めた。 3.理論的枠組みに関する検討 システム間の関係や言説の分析、身体の構築性に関する先行研究を検討し、研究会やピアレビューで知見を深めた。それをもとに、1の歴史的分析と2の現代の分析を接合する理論枠組みを検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる目的である現代編の進捗が遅れているものの、そのための準備作業として、申請時の予定以上に戦前期の子ども観の多角的な分析を深めており、公表もできている。4年計画の2年目としては、順調であると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
問題は生じていないが、申請時より研究の力点に変更がある。後半2年では、申請時の予定よりやや変更し、戦時動員時の子ども観の揺らぎに関する分析などを加えて戦前編を厚くする。同時に、社会を諸制度の連関と見るシステム論や、身体の構築性を考える議論をもとに理論枠組みを深め、それらと現代の事例研究や言説資料を突き合わせ、当初の目的である現代の子ども観の揺らぎの検討へと研究を進めていくこととする。
|