2010 Fiscal Year Annual Research Report
自由主義社会における社会的排除:資源分配・ネットワークと自由感によるアプローチ
Project/Area Number |
22730413
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
内藤 準 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (00571241)
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Keywords | 社会学 / 社会秩序 / 自由 / 資源分配 |
Research Abstract |
平成22年度は,研究実施計画に基づいて経験的研究と理論的研究の両面で研究をおこない,以下の成果をえた.経験的研究では,第一に,既存データの二次分析をおこなうことで,平成23年度以降に計画する調査研究のための予備的知見を収集した.第二に,全国調査データを用いた主観的自由指標の分析により,現代日本社会では,男性より女性の方が,自分で生き方を選ぶことができると回答しにくい状況におかれがちなことを明らかにした,さらに,この「生き方の選択の自由」に関するジェンダー不平等が生ずるのは,生き方を自由に選べるような状況をもたらすのが個人収入を中心とする個人単位の資源であり,そうした資源が男女で不均等に分配されているためであることを確かめた.この成果については日本社会学会大会において報告をおこなった.また出版準備中の書籍に論文として掲載される予定になっている. 理論的研究では,自由主義的な規範的ルールに基づく社会秩序のあり方を分析するための準備作業として,社会的相互行為における規範的ルールの働きの基礎的研究をおこなった.今日の社会科学では,人びとを「目的をもつ行為者」として描く目的行為理論が標準的な枠組みの一つになっている.この枠組みは人びとの行為の意味を理解し説明するために不可欠である一方,行為の状況自体は所与として扱う.しかし実際には,社会的行為の状況それ自体,人びとによって構成されたものであり,さまざまな規範的ルールはその状況の構成において作用するものである,そこで本研究では社会的相互行為を,目的行為として記述する水準と,状況を構成する作業を記述する水準とを組み合わせて分析することにより,適用される規範的ルールの変更による状況の意味や行為選択肢の変化,それに伴う行為の帰結の変化などを捉えうる可能性を示した.この研究成果は所属研究機関の紀要において論文として発表した.
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