2010 Fiscal Year Annual Research Report
途上国NGOのトランスナショナル化に関する研究-国際発展モデルの比較分析
Project/Area Number |
22730416
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 華生子 早稲田大学, アジア太平洋研究センター, 研究員 (80507905)
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Keywords | 東南アジア / 途上国NGO / 市民社会 / 国際開発 / トランスナショナル化 / ネットワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、フィリピンの開発NGOであるガワッド・カリンガ(以下、GK)の海外展開を事例にとって、途上国NGOのグローバルな活動の拡がり(トランスナショナル化=多国展開)を分析し、欧米のNGOを中心として形成されてきた市民社会レジームを再検討することである。 研究初年度の今年は、二つの大きなフィールド・ワークを基にして、GKのグローバルな活動展開の現状を把握することと、その活動を支えるネットワークを精緻化することに努めた。第1の調査では、シンガポールで開催されたGKの世界会議に出席し、海外事業に関するセッションへの参加や、国外オフィスのスタッフに対する聞き取りなどによって、トランスナショナル化の方向性や今後の展望についての知識を深めた。第2の調査は、マニラの本部でインタビューを行い(先進国支部の担当スタッフや、国外オフィスを立ち上げた専門家たち、リソース調達の部署など)、海外事業の実施にかかるネットワーキングの分析を進めた。それらのフィールド・ワークから見えてきたことは、GKが国内外の協力者や支援者を網羅するチャネルを作り上げていることであり、その根幹には、以下にあげる2つの要点を指摘できる。第1の要点は、行政機関とのダイレクトかつ強固なネットワークである。GKは行政機関のニーズに沿った連携の構築に成功し、プログラム規模の拡大に成功している。第2点目は、ファンド・レイジングの拠点を国外にも設立することによって、活動資金などを直接調達していることである。興味深い点は、海外で働くフィリピン人の組織化を活かして拠点づくりを進め、グローバルな支援ネットワークを強化していることである。このようなGKの動きは、途上国のNGOがみずからリソースを獲得するメカニズムを築き上げ、活動のトランスナショナル化に取り組むという、オルタナティブな国際NGOのあり方を示しているといえよう。
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