2010 Fiscal Year Annual Research Report
産業遺産をめぐる歴史と記憶についての知識社会学的研究
Project/Area Number |
22730417
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
周藤 真也 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (60323242)
|
Keywords | 産業遺産 / まちづくり / 鉱山 / 炭鉱 / 歴史 / 記憶 |
Research Abstract |
平成22年度は、研究初年度であり、本研究の基礎の形成や来年度以降の研究の準備にあたった。これまで本研究の準備に取り組んできた中で、主に旧産炭地における炭鉱の歴史と記憶について現地調査を行ってきたため、本年度はこれを金属鉱山に広げて研究を行った。関東地域(日立、足尾など)、東北地域(小坂、尾去沢、釜石、細倉など)、西貝本(生野、柵原、吉岡、別子など)の現地視察を行い、旧鉱山の遺構の状況、関係する資料館等における遺物などの保存状況、旧鉱山の歴史の記述形式やまちづくりに活かす取り組みなどを確認し、関係する資料の収集を行うとともに、炭鉱の場合との比較研究を行った。その結果、金属鉱山の歴史は、多くの場合、近代化以前からの歴史をもっているため、それへの言及が多く、相対的に近代化以降のことがらへの言及が省略されたり捨象されたりすることにおいて、基本的に近代化以降の歴史としてしか語られない炭鉱との際立った違いを見せていることが明らかになった。 また、本年度は、海外との比較研究の準備のため、西欧やアジアにおける事例として、イギリスの旧鉱山の歴史と台湾の製糖産業の記憶について現地視察を行った。台湾においては、2000年代に入って日本統治時代から長年基幹産業であった製糖産業が急速に衰退していく中、台湾製糖を中心として観光化の取り組みが見られ、その中で製糖産業の記憶がどのように扱われているのかを確認した。イギリスにおいては、南ウェールズやヨークシャー地方の炭鉱、コーンウォール地方の鉱山(銅、錫鉱)の遺構や関連する博物館等を視察し、イギリスの鉱山が産業革命との深い関わりのもとに語られている実態を観察した。 以上のように、本年度は現地視察を中心として取り組んできたが、次年度以降、より比較対象を広げるとともに、収集した情報や資料をもとに、順次研究発表を行っていきたいと考えている。
|
Research Products
(1 results)