2012 Fiscal Year Annual Research Report
産業遺産をめぐる歴史と記憶についての知識社会学的研究
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22730417
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
周藤 真也 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (60323242)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | 産業遺産 / まちづくり / 鉱山 / 地域の記憶 / 歴史の社会学 |
Research Abstract |
本年度は、研究第3年度であり、前年度までの研究に引き続き、①旧足尾銅山の栃木県日光市足尾町を対象とする事例研究を行うとともに、②国内の他の鉱山の事例や、海外の事例などとの比較研究、③旧鉱山を中心とした遺物・遺構の産業遺産化と地域での取り組みに関して収集した資料のとりまとめ、を中心に行った。 事例研究については、栃木県日光市足尾町の旧足尾銅山における歴史や記憶を活用した「まちづくり」や地域活性化の取組みについて、前年度に引き続いて資料収集やフィールドワーク、関係者へのインタビューなど聞き取り調査を行うとともに、調査データの取りまとめを行った。具体的には、前年度までで未訪であった団体への聞き取りや、産業遺産ツアーや祭りなどの地域の活動、アートプロジェクトの活動の視察などを中心に、産業遺産化や世界遺産登録運動を焦点化しながらも、その周辺におけるさまざまな人々の活動を通して、多面的に研究事例を検討することができた。 また、比較研究に備えて、これまで数多くの国内の金属鉱山の事例を視察してきたが、本年度も、金銀鉱山を中心に中小の鉱山を含めて重点的に地域での取り組みを視察してきた。具体的には、手稲鉱山(北海道)、恵庭鉱山(北海道)、阿仁鉱山(秋田県)、院内鉱山(秋田県)、松尾鉱山(岩手県)、玉山鉱山(岩手県)、鹿折鉱山(宮城県)、大谷鉱山(宮城県)、桑折鉱山(福島県)、佐渡鉱山(新潟県)、新大谷鉱山(京都府)、大江山鉱山(京都府)、串木野鉱山(鹿児島県)などである。なお、本年度は、時間の関係で、海外の事例を現地に視察することはできなかった。 以上のことから、海外の事例を含めて、旧鉱山地域の様々な取り組みについて、これまで多くの資料や情報を収集してきており、これらの整理に時間を割いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
産業遺産の中でも、金属鉱山を中心とした鉱山の遺構や遺物に焦点を当てて、旧鉱山地域における鉱山の歴史と記憶をめぐる人々の活動に題材を絞ったことや、研究手法などにおいて計画の微細な変更はあったものの、おおむね研究は順調に進展している。 ただし、日本の主要な鉱山(炭鉱を含む)のほぼすべての遺構・遺物の産業遺産化の状況と地域での鉱山の歴史と記憶を活かしたまちづくりの取り組みの現状を視察し、西ヨーロッパや東アジアの事例についても資料や情報を収集し、その主なものについては現地を視察している中、収集した資料や情報が膨大になってきている。比較研究を行い研究の取りまとていくにあたって、これらの膨大な資料や情報の分類や整理に、かなりの時間の時間が要することが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究の目的」として掲げていたように、本研究は「現在、実際に起こっていることがらを具に観察して記述すること」を目的としていた。このため、前年度および前々年度には、具体的な事例を詳細に検討することを優先させ、栃木県日光市足尾町の旧足尾銅山地域における事例を詳細に検討するため、現地に頻繁に足を運んでフィールドワークを行い、情報や資料を収集することを重点的に行ってきた。今後は、その活動を継続しながらも、並行して精力的に行ってきた国内他箇所や海外における事例の視察や情報・資料収集の成果とその取りまとめをしながら、比較研究の形で取りまとめる。すなわち、旧足尾銅山の事例を中心としつつも、それを記述する上で、他地域にも参照する形で比較を行い、研究成果をまとめていく。
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Research Products
(1 results)