2010 Fiscal Year Annual Research Report
アーレントの全体主義論の独創性とその思想的展開に関する社会学的研究
Project/Area Number |
22730420
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Research Institution | Nagoya Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 陽子 名古屋産業大学, 環境情報学部, 准教授 (40387907)
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Keywords | 社会学 / 思想史 / 社会福祉関係 |
Research Abstract |
平成22年度は、6月、第83回日本社会学会にて、「ハンナ・アーレントにおける「社会問題」」というタイトルで、報告要旨・報告基礎原稿を送付し、学会エントリー」。発表は平成22年11月6日。 この報告の目的は、『全体主義の起原』において、年金、福祉、貧困救済といった問題を、アーレントが政治から切り離した意図を明らかにすることである。 『全体主義の起原』の中で、アーレントは、難民、無国籍者に救済金、年金を給付すれば人権が保証されたことになるのか、という批判を展開している。アーレントが社会問題を政治問題として扱うことを否定するのは、第一次大戦敗戦後のドイツの失業、住宅・生活物資の不足、ハイパーインフレといった社会不安の中、ヒトラーがこれらの社会問題を政治問題として失業や貧困問題に着手し、ドイツ国民の生活水進を向上させ、彼らの支持を獲得したという背景がある。生活の安定をえたドイツ民衆はヒトラーを支持し、強制収容所の存在を知りながら沈黙、つまり暗黙の合意をあたえたからである。 この報告において、アーレントの全体主義論の独自性として、沈黙は、事実を無にすることと同じ、つまり「公開」が欠如している現象であること、概念を厳密な意味で扱うことの重要性を指摘した。 「全体主義の起原』できわめて慎重に用いられている「公開」について、平成22年度末に、論文「ハンナ・アーレントにおける「公開」」(約17,000学)にまとめた。 上述の2件の実績は、平成23年度、論文投稿、さらにハイデガーの影響へと研究を進めるうえで意義あるものとなった。
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