2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730425
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
井上 義和 関西国際大学, 人間科学部, 准教授 (10324592)
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Keywords | 児童文学 / 道徳教育 / メディア史 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
「偉人伝」に関する文献収集を進めるのと並行して、偉人伝型の教養小説として「路傍の石」に着目した。「路傍の石」は昭和12(1937)年に朝日新聞に連載されると、翌年には映画化され、広く国民に認知された。戦後も昭和30年代に三度映画化され、この時期に少年少女の必読書となった。その意味で、「路傍の石」は民間教育メディアとしての社会的機能を担ったといえる。しかし戦後に普及した鱒書房版は、戦前の原作(朝日新聞→主婦之友にて改稿)のうち後半で描かれていた職業生活がカットされ、前半の仕事と学問の両立(勉強立身)のところで終わっている。こうした「路傍の石」の受容のされ方の変化から、民間教育メディアにどのような物語が期待されていたのかが明らかになる。2010年度は、「路傍の石」の受容史を調査し、戦前のフルバージョンと戦後の普及版との違いから、民間教育メディアに期待された物語は何だったのかを考察した。大学での講義(本務校「社会階層と文化」非常勤「歴史社会学」)で学生が「路傍の石」をどう受容したのかも調査した。また、「路傍の石」の時代背景となる高等小学校卒業者の進路や丁稚奉公制度に関する文献も収集した。以上の成果は2011年度に論文にまとめる予定である。
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