2011 Fiscal Year Annual Research Report
多胎育児の脆弱性についての実証的研究:エンパワーメントの視点から
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22730429
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
越智 祐子 同志社女子大学, 現代社会学部, 助教 (40455556)
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Keywords | 多胎育児 / マイノリティ / 社会的脆弱性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多胎育児の社会的脆弱性を明らかにし、社会的な支援の必要性が高いことを示すことである。この目的を達成するため今年度の研究を実施した。 主な成果は、(1)多胎育児の特徴について伝える映像作品の当事者参加による制作および、(2)多胎育児家庭における父親の役割や支援のあり方を検討するための調査の実施である。 まず(1)について報告する。映像制作についての基礎知識の共有を経て、自分たちの作品についての検討を開始した。ドキュメンタリーかドラマかという形式について検討した後、どのような内容を伝えるかという内容について議論した。話し合いの結果、ふたご連れでの外出の困難さと、世間の固定化されたふたごイメージをつらく感じることが明らかになった。そこで外出時の困難さについて理解を求めることになった。話し合いで語られたさまざまなエピソードを用いてシナリオを作成し、シーン撮影をおこなった。秋からはシナリオに基づいて編集作業をおこなった。こうして一度作品を作成したが、作品の完成度を高めるためドラマを身近な友人知人にみてもらう機会をもった。結果、多くの修正意見が集まったので、インタビュー場面を作品に追加することを会議で決定し、来年度引き続き制作する。以上の全過程は多胎育児当事者グループと共同で実施した。ビデオカメラは子育て中の家族になじみ深い道具だが、通常は単なる記録媒体として認識されている。今回の共同作業を通じて、記録したものを使って表現する方法や、表現から対話が生まれることを、作業の参加者へ伝えることができた。 次いで(2)について報告する。多胎育児においては父親らは配偶者の疲れ切った様子から育児参加を決意するが、その彼らへの支援は公的には存在しない。この現状では、多胎に特化した父親応援プログラムは、知恵を共有し共感し合うきわめて重要な場であり、各地で多胎の父親支援の必要性が強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当事者の積極的な参加が得られているため、想定より多くの提案やデータが集まっている。本研究は当事者のエンパワーメントを志向しており、この点からも当事者の主体的な関与は評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドラマ制作という今年度当初の目標は達成したが、さらにドキュメンタリー的要素であるインタビュー場面を挿入することになったため、データ追加と編集が必要になっている。早急に対応する予定である。完成後は上映会の企画開催を予定しているが、これまでに積極的参加を得ていることを受けて、当事者主体による内容となるよう実施過程と内容を修正する。
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Research Products
(1 results)