2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730431
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
甲田 菜穂子 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (90368415)
|
Keywords | 社会福祉関係 / 知的障害 / 精神障害 / 受刑者 / イヌ / ストレス / コミュニケーション |
Research Abstract |
知的障害、精神障害を持つ受刑者を対象とした日本初の市民参加型の訪問型イヌ介在プログラムを発展させ、社会復帰のための更生教育におけるイヌとの触れ合いが受刑者のストレス、感情やコミュニケーションスキルに与える影響を検証した。調査指標として、毎回の実践前後の対象者の唾液中のコルチゾール測定、質問紙による気分測定、毎回の実践後の感想文、ハンドラーによる行動評定を用いた。同時に、実践を実施した人とイヌへの福祉的配慮として、毎回の実践前後のイヌの唾液中のコルチゾール測定、行動評定、ハンドラーの気分測定も実施し、過度な負担がかからないようにプログラムをモニタリングした。結果では、対象者は、セッション参加後の気分得点に有意な改善がみられた。経時変化では、いらいら感、疲労感の増加がみられた。対象者の感想文の内容は、セッションに対して総じて肯定的であったが、他者の内面や社会的事象に関する関心度には課題が見られた。ハンドラーは、対象者のイヌと人との相互交渉を肯定的に捉え、そのスキルの経時的な向上を評価した。コルチゾール値の詳細は個人差が大きく、現在も分析中であるが、セッション前後での増減に注目すると、減少したサンプルの方が増加したサンプルより多かった。実践側のモニタリングでは、ハンドラーのストレスは総じて問題がないレベルに収まっており、実践後には気分の改善が認められた。イヌのコルチゾール値の詳細は現在も分析中であるが、多くのイヌは、セッション前後で大きな変化が認められないか、逆にコルチゾール値が減少した個体もいた。本プログラムは、対象者だけでなくハンドラーにとっても効果的であり、対象者とハンドラーの双方が本プログラムの有効性を評価していた。今後、対象者のいらいら感と疲労感の緩和などの改良を重ね、さらなる効果の検証を行なっていく予定である。
|