2010 Fiscal Year Annual Research Report
過疎自治体における地域包括ケアの形成要因に関する研究
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22730432
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
加川 充浩 島根大学, 法文学部, 准教授 (40379665)
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Keywords | 地域福祉 / コミュニティ / ソーシャルワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、過疎自治体において地域包括ケアシステムをどのように形成すべきかについて、方法論を明らかにすることである。 研究の対象は、住民の自主組織と福祉専門職の両者である。調査については、両者を対象として、(1)ヒアリング調査、(2)地域福祉計画策定を通した参与観察調査、を行った。 明らかとなったのは次の3点であった。 第一は、住民組織の継続的運営のために専門職が適切に介入する必要である。現在、過疎地域では合併による住民組織の再編がみられる。そのため、組織は新たな課題に直面しており、運営に困難が生じている場合もある。そこに福祉専門職がコミュニティワーク手法を用いて介入することが求められている。 第二は、専門職の意図的なソーシャルワーク実践である。ここでの「意図的」というのは、専門職が有する支援事例に、住民を意図的に巻き込むことを指す。現在の福祉課題は、制度のみでは解決できないものが増えていると指摘される。制度的福祉と異なるインフォーマルな住民活動を用いた福祉援助が求められているとも言える。そのためには、福祉専門職が意図的(戦略的)に地域住民を巻き込むことが必要と考えられる。 第三は、自治体政策のなかに地域包括ケアシステムを導入することである。地域包括ケアシステムは、全国的な介護・医療制度の中には組み入れられていない。そのため、報酬も十分ではなく、専門職が取り組むためのインセンティブが欠けている。現状では、専門職個々の熱意に支えられているという状況である。地域包括ケアシステム実現のためには、地域の実情に応じた自治体の政策的支援が必要となる。 来年度から、地域包括ケアは全国でも政策的に実施される予定である。そうしたことからも、上記の考察は、地域包括ケアに取り組む関係者にとって、一定の示唆が得られるという意義があると思われる。
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