2011 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者福祉施設における介護職員の職場環境とサービスの質の関連に関する実証的研究
Project/Area Number |
22730457
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
神部 智司 大阪大谷大学, 教育福祉学部, 准教授 (10342164)
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Keywords | 高齢者福祉施設 / 介護職員 / 職場環境 / 満足度 / 自己評価 |
Research Abstract |
高齢者介護サービス分野において良質なサービス提供が重要な課題とされ、介護職員自身によるサービスの自己評価や利用者の満足度評価などの手法を用いたサービスの質の評価が広く実施されている。しかし、サービスの質の評価に影響を与える要因、特に介護職員の労働環境に対する認識がサービスの質の評価に及ぼす影響の大きさについて検討を試みた先行研究は、わが国では皆無に等しい。利用者に良質なサービスを提供するためには、介護職員の労働環境に対する認識に焦点を当てること、すなわち良質なサービス提供につながる労働環境のあり方を検討することが重要であり、本研究はそれを実証的かつ多角的に行うことに意義がある。そこで、平成23年度はWAM-NETに登録されている大阪府下のすべての特別養護老人ホーム(353施設)の介護職員(1施設あたり3名)を対象とし、自記式質問紙を用いた郵送調査を平成24年2月16日~3月23日にかけて実施した(対象者総数は1,059名)。回収数は322票(回収率30.4%)であった。調査内容は、「サービスの質の自己評価(18項目)」「上司・同僚との関係(16項目)」「労働環境に対する認識(32項目)」「利用者の満足度に対する認識(10項目)」「精神的健康度(12項目)」「所属施設の基本属性(3項目)」「回答者の基本属性(10項目)」とした。現在、統計処理ソフトSPSS 17.0 for Windowsを用いて入力した回答データについて、単純集計により、そのおおまかな特徴を把握している段階である。そして、次の段階として先行研究のレビューにより構築した分析枠組みに基づいて変数間の関連、特に「労働環境に対する認識」が「サービスの質の自己評価」および「利用者の満足度に対する認識」に対してそれぞれどの程度影響を及ぼしているのかについて、構造方程式モデリングを用いた実証的な検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別養護老人ホーム入居者の重度化により、本研究では入居者本人に対して満足度評価を実施することが困難と判断し、介護職員の「利用者の満足度に対する認識」で代用することにした。これにより、「自己評価」と「利用者の満足度に対する認識」という異なる2つの視点からサービスの質の評価を把握することができ、「労働環境に対する認識」との間で多角的な検討を行うことが可能となった。調査の実施時期は2月中旬~3月中旬と年度末に近い時期となったが、それだけ十分な時間をかけて先行研究のレビューを行い、適切な質問項目を設定して調査を行うことができたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究のレビューによって構築した仮説モデルを多角的に検証するための十分なデータが得られたので、変数間の関連について慎重かつ丁寧に分析を行い、先行研究には見られなかった新しい知見を示していく。また、得られた知見は学会発表ならびに学会誌へ論文投稿を行うことで広く公表していくとともに、本研究で得られた知見をもとにさらなる仮説モデルの構築に取り組んでいく。
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Research Products
(2 results)