2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730473
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
石黒 格 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (90333707)
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Keywords | 地域間移動 / パーソナル・ネットワーク / 適応 / 趣味縁 / 下位文化理論 / ローカル・トラック |
Research Abstract |
2010年度に行った調査データの分析を進め、日本社会心理学会、数理社会学会、日本グループ・ダイナミクス学会にて、各一回ずつ発表した。また、その後も分析を続け、研究の成果を書籍として刊行することが決定した(2012年8月刊行予定)。 そうした場で公表された(書籍において公表される)成果は、以下の通りである。1)東北から南関東に移動した東北出身の若者は、出身地での人間関係を減少させる、2)東北出身者が移動後に形成する人間関係は、移動しなかった場合と変わらず、南関東出身者とも変わらない、3)東北出身者がUターンした場合、出身地での人間関係は移動しなかった者と変わらない、4)これに対して、南関東出身者では、進学や就職で地元を離れた経験があると、高校以前の友人関係が減少する、5)移動者、特に進学時に東京圏に移動した者は、趣味を同じくする友人からなるネットワーク(同趣味ネットワーク)を拡大する、6)東北出身者は南関東に移動する傾向が強く、そのため、個々人の意思決定とは独立に、移動が集合的な現象となる。結果、移動先が南関東であるかぎり、移動後に孤立に陥る確率が低い。 以上の成果を得たものの、下位文化理論との関係でも重要な、趣味について、その具体的な内容を測定していないという問題があった。そこで、2011年度の研究予算を用いて、小規模な追加調査を行った。趣味を、若者の間では愛好者の多い音楽に限定し、「同じアーティストを好きな人」として、同趣味ネットワークの測定を行った。結果として、おおよそ2010年度の知見が再現されたほか、地方においては好むアーティストのポピュラリティが低いと、同趣味ネットワークが小さくなるのに対して、大都市では好むアーティストのポピュラリティと同趣味ネットワークのサイズが無相関だった。この結果は、部分的に下位文化理論を支持し、かつ、地方出身者の、大都市への移動の利益を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に順調にデータ分析が進み、24年度中に知見を書籍として刊行できることとなった。さらに、調査するポイントを明確化できたため、追加調査を行うことができた。そのため、知見の安定性についても確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
経済学的な視点を取り入れ、また、そうした領域で行われてきた調査と調査対象者を合わせようとしていたため、既婚女性が調査対象から除かれていた。しかし、結婚、出産は、女性が移動し、移動先で定着を決定する重要な要因となっている。この問題を検討するため、追加調査を実施したい。その上で、報告書を刊行する。
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Research Products
(3 results)