2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730474
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
熊谷 智博 大妻女子大学, 文学部, 助教 (20400202)
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Keywords | 集団間葛藤 / 道徳性知覚 / 集団間接触 |
Research Abstract |
本年度は、外集団の道徳性を実験場面で操作し、それによって外集団との紛争場面での報復行動がどのように変化するかを中心に検討した。これは本研究課題の中心的テーマであると言える。具体的には実験室にて3人一組の集団を2つ作り、相互に利益分配を行うという設定で参加者には課題を行ってもらった。実際には他の参加者はおらず、コンピュータを相手に課題を行った。参加者は集団(参加学生の所属学部にて操作、あるいは無作為に割り当てられた、最少条件集団にて操作)を形成し、その内集団成員から平等な分配を受けるという経験をした。その後、参加者は外集団成員同士の会話を聞き、外集団に対する印象を評定した。外集団の会話は道徳性に関する操作を行うために、2タイプ用意してあった。会話内容は両条件とも道徳的ジレンマについて、集団で選択を下す様子を録音したものであった。下された選択自体は両条件とも同じ(5人を救うために、1人を犠牲にする)であったが、その選択を下すまでの時間が操作された(10秒vs.1分)。その後、内集団成員(参加者本人ではない)が外集団から不平等な扱いを受けている様子を観察し、それに対して報復する機会(不快なノイズ音を9段階から選んで与える)が与えられ、その際に選択されたノイズ音の強さが攻撃の測度として記録された。結果は、同様に不公正な扱いをされても、外集団が道徳的な人々からなる集団であると知覚されている時には、報復が弱くという結果が得られた。しかしながら不公正さの程度を操作したところ、報復の強さは集団間での不公正な処遇によって大きく影響を受けており、その分銅特性の効果は弱くなってしまった。この事は集団間紛争に対する道徳性の効果の限界を示唆している。 また本年度は道徳性の効果を更に広く捉えるため、外集団、特に近隣諸国の人々に対する道徳性知覚が、国防費の妥当性判断に与える影響について、基礎的な調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、外集団に対する道徳性知覚が集団間関係に与える影響についての質問紙調査を実施し、前年度の結果との比較を通じて、社会的状況、文脈に影響される要因とされない要因を検討することができるようになった。更に当初の計画通り、その結果を基に実験室実験にも着手し、道徳性知覚が実際の攻撃行動に与える影響について、詳細に検討することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は当初の計画に加え、状況や社会的文脈が与える影響についてより詳細に検討する予定である。具体的には社会的状況の異なる複数の国(候補としては、イギリス、アメリカ、イスラエル、セルビア、キプロス)において、その国の状況と外集団に対する道徳性認知の関係を検討し、さらにそれが集団間態度・行動に与える影響についての基本的理論モデルの構築を行う。
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Research Products
(6 results)