2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22730474
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
熊谷 智博 大妻女子大学, 文学部, 助教 (20400202)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 集団間葛藤解決 |
Research Abstract |
集団間葛藤解決と道徳性知覚の関係を検証するために、本年度は被害者の道徳性知覚の効果を調査した。具体的には287名の大学生を対象に、日中関係に関する質問紙調査を行った。調査項目は「知覚された中国人の道徳性」「知覚された中国人の有能さ」「集団的罪悪感」「日本政府による謝罪の支持」「日本政府による賠償政策の支持」であった。心理過程としては被害者の道徳性を強く知覚していればいるほど、加害者は自集団の加害行為をより非道徳的と考えるので、それだけ集団的罪悪感が強くなる、そして集団的罪悪感が強くなればなるほど、被害者集団に対して、政府による謝罪と賠償政策への支持的態度が強まると予測した。一方知覚された有能さは集団的罪悪感に影響を与えないので、政府による謝罪と賠償への態度に影響を与えないと予測した。結果は予測通り、知覚された中国人の道徳性は政府による謝罪支持、政府による補償支持の両方を直接強めていたが、同時に集団的罪悪感を介しても効果を与えていた。その一方で、知覚された中国人の有能さは全く効果を持っていなかった。この結果より、被害者集団に対する単なる肯定的な知覚そのものが集団間葛藤解決に効果的な謝罪や賠償への支持を促進するのでは無く、知覚された特性の中でも道徳性が特に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 本年度は更に、本研究の応用可能性を探るために、JICAの協力を得て実際の紛争地帯であるボスニア・ヘルツェゴビナのモスタル市にあるMostar Gymnasiumでの取り組みについて調査を行った。特にコンピュータ科目の授業を利用した民族融和の取り組みについて、教材、手続、課題などについてインタビューを行った。今後はJICAと協力して、民族融和プログラムの効果検証に関する調査を行い、その中で外集団に対する道徳性知覚の効果の検証を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は質問紙調査を中心に道徳性の効果の検証を行ってきたが、一方でこれまで行ってきた外集団の道徳性知覚が集団間攻撃行動に与える効果についての実験室実験は予定通りに進められなかった。これは従来の手続に大幅な修正を加える必要が生じたためであるが、その問題は既に解決済みなので次年度すぐに実験を再開できる。また本年度は研究成果を現実場面で検証するためのフィールド確保に時間がかかり、実際に応用することが出来なかったが、この点も来年度には着手できると思われるので、最終的には本研究計画の当初目的を達成できるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から道徳性知覚による集団間葛藤の抑制効果が明らかになってきたので、今後は実験室実験によってそれをより詳細に検討し理論モデルの構築を行う。更にボスニアやイスラエルを対象とした文化間比較を行い、社会情勢が道徳性の効果に与える影響についても検証していく予定である。最終年度である次年度はこれまでの研究成果を論文雑誌および国際・国内学会で発表すると同時に、その成果をまとめ、理論化し、更なる発展的研究の基礎を形成する。
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Research Products
(7 results)