2011 Fiscal Year Annual Research Report
中高年者の居住地域に対するコミュニティ感覚の構造と変化
Project/Area Number |
22730476
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 育子 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任助教 (10509821)
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Keywords | コミュニティ感覚 / 高齢社会 / 居住地域への態度 |
Research Abstract |
単身世帯の増加、人口の高齢化等の人口世帯構成の変化により都市部における地域と住民のつながりが注目されている。特に中高年期は就業等社会活動からの引退等により地域で孤立するリスクが高まる一方で、地域活動を開始し地域でのつながりをつくり、地域の支え手となる可能性も高まると想定される。中高年者と居住地域とのつながりの在りかたを理解し、つながりの促進、阻害のメカニズムを明らかにするために、本研究ではコミュニティ感覚(Psychological Sense of Community:PSOC)という概念に注目し実証研究を行った。 前年度の研究結果を踏まえ、コミュニティ感覚尺度の構造の妥当性と一般化可能性を検討するため、首都圏近郊都市に在住の55歳以上を対象としたランダムサンプルへの社会調査を実施した。SCI(Sense of Community Index,オリジナルはPerkins et al.,1990、日本語版は笹尾ら,2003)12項目にコミュニティへの効力感等4項目を加えた16項目を質問した。1133名からの回答を分析した結果、SCI12項目の構造については3因子構造が確認され、追加した4項目のうち3項目はコミュニティに対する貢献意識に関する独立した4つ目の因子となった。定年退職や地域活動への参加がコミュニティ感覚にもたらす影響の検討に関しては、本調査データで相関的な分析を実施した。地域活動への参加有無や定年退職前および定年退職後の経過年数で複数の群に分けて、コミュニティ感覚に相違があるか検討した結果、地域活動参加者はいずれの因子も有意に高得点を示したが、定年退職の前後での相違は有意ではなかった。 これまでの研究結果と本社会調査の分析結果を合わせると、中高年者のコミュニティ感覚はSCIを用いると3因子構造で表され、それらはコミュニティへの貢献意識とは関連するが異なる概念であった。地域活動への参加や仕事からの引退によるコミュニティ感覚の時系列的変化を示すには至らなかったが、中高年者がコミュニティとのつながりを持つ条件、コミュニティ貢献行動につながる要因を洗い出した。
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