2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730479
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
中間 玲子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (80343268)
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Keywords | 自尊感情 / 自己嫌悪感 / ポジティブ信奉 / 自己意識 / 自己認知 / 経験世界 |
Research Abstract |
低自尊感情者の自己形成過程を明らかにする事を目的とする本研究において、平成22年度は、「経験の意味づけと自己への統合過程」を課題とし、低自尊感情者の自己概念や自己物語の特徴について、経験事象との関連について明らかにすることを目的とした。 (1)23歳~47歳の成人男女10名を対象に、過去に経験した自己嫌悪感体験についてインタビュー調査を行い、自己嫌悪感が現在の自己肯定の礎となる際のパターンを探った。10名中5名が該当し、メタ認知への活用(1名)、意味変容による自己肯定(2名)、全体的自己受容(2名)の3つのパターンが見出された。また、全体的自己受容に至った過程では、自己を変えようとすることではなく、直面している具体的課題に取り組んだことで、結果的に自己を肯定できるようになっていたことが特徴的であった。ここから、自己嫌悪感から全体的な自己受容に至るには、一時的な自己意識の放棄が必要になるのではないかと考えられた。 (2)経験世界に対する認知様式と自己感情との関連を検討するため、経験世界をポジティブに考えることによってポジティブな結果が得られるとする信条である「ポジティブ信奉」を概念化し、尺度作成の作業がなされた。尺度の信頼性および基準関連妥当性がある程度示され、また、ポジティブ信奉が高いと、積極的な日常を過ごすことができているが、同時に、二分法的思考やネガティブさを受け入れない傾向が高いことが示された。ただし、因子に不安定さが見られるため、現在、さらに弁別的妥当性や関連尺度との検討を続けている。 (3)自尊感情と自己認知との関連を検討するため、自己の属性以外を根拠に自己への肯定的感情を感じる様式として「非主体的自尊感情」を概念化した。現在、尺度作成に向けて検討している。 (4)その他、青年期の自己否定から自己肯定への過程について、また、成人期の自己否定と自己肯定の様相についてまとめた。
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