2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730494
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
中西 大輔 広島修道大学, 人文学部, 准教授 (30368766)
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Keywords | 社会的不確実性 / リスク / ゴシップ / 関節互恵性 |
Research Abstract |
申請者は、世の中に存在する多様なリスクを自然的リスクと社会的リスクの2種類に分けている(Nakanishi&Ohtsubo,2008)。本研究では、特に後者の社会的リスクに焦点を当てた。間接互恵性仮説(Nowak&Sigmund,1998)によれば、評判情報が利用できれば大規模集団でも協力が成立する。しかし、Nakanishi&Ohtsubo(2009)では、社会的リスクに関して人は他者からの助言を利用しないという結果が得られている。このことは、間接互恵性仮説が前提としている条件が必ずしも成立しないことを示している。本研究の目的は、社会的リスクに関する情報を人々が正確に伝達する要因や、そうした情報を利用することによるマクロな帰結を明らかにするために実験研究を行った。 平成23年度には、人々がどの程度ゴシップ情報を他者に正確に伝達するかを検討した。本研究では、コミュニケーション・チェーン・パラダイム(Kashima,2000)を使い、実験参加者が他者のネガティブな情報を他の人に正確に伝えるかどうかを確認した。実験では、最初の実験参加者はある学生の一日について書かれた紙を渡され、それを2分以内で記憶するように求められた。次に参加者はPC上のテキストエディタを使ってその紙を見ずに、記憶した内容をタイプした。実験者は実験参加者のタイプした内容をプリントアウトして、次の人に渡した。次の人のタスクは渡された紙の内容を記憶することであった。この手続きは5番目の参加者が回答するまで続けられた。実験の結果、特に他者の道徳的にネガティブな行動に関する情報の一部については、他の情報と比べて正確に伝達されやすいことが示された。 一方、当初計画していたダブルジレンマ実験については、進化シミュレーションの予測と一貫する結果が得られておらず、実験パラダイムの修正が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたダブルジレンマ実験については、進化シミュレーションの予測と一貫した結果が得られなかったが、噂の伝達についての実験については、他者の道徳的にネガティブな行動が正確に伝達されやすいことが分かり、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、噂の伝達については、昨年度得られた実験参加者の再生データ(文字情報)のコーディングをより詳細に行い、国際学会(Human Behavior and Evolution Society)で発表する。また、ネガティブな情報の伝達について、風評被害などをキーワードに新たな研究を企画している。ダブルジレンマ実験については、昨年度行ったペーパー&ペンシルの実験が順調にいかなかったことから、ネットワークでダブルジレンマ実験を行うことができるコンピュータプログラムを開発し、より効率的にパラメータを変更しながら、丁寧に集団間葛藤と社会的影響の関係性について検討したい(既にプログラム開発については昨年度開発業者との打ち合わせを行っている)。
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