2010 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪に備えるために:二重過程理論に基づく犯罪対処行動の促進
Project/Area Number |
22730497
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
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Keywords | 犯罪被害 / 説得的コミュニケーション / 二重過程理論 / 因果推論 / 縦断分析 / 予防 / 脅威アピール / 不安全行動 |
Research Abstract |
本研究では、一般市民の日常的な犯罪への備えである犯罪対処行動を促進させる要因を明らかにするため、日本の実情に応じた犯罪対処行動尺度の作成、調査法を用いた犯罪にまつわる認知・感情・行動の因果関係の分析、実験法による犯罪対処行動の促進要因の分析を行う。 本年度は、(1)犯罪被害防止場面でのリスク特徴の考察、(2)既存の社会調査の分析による不安全行動の分析、(3)防犯情報提示実験のための素材収集と刺激作成、をそれぞれ実施した。 (1)では、英米での犯罪被害調査における関連項目を収集するとともに、日本で現時点で入手可能な犯罪統計データを分析し、その特徴を災害、交通、環境など他のリスク分野と比較した。その結果、他リスク分野との共通点として(1)被害リスクの偏在、(2)発生確率・結果の重大性のばらつき、(3)ゼロリスクの達成の困難度が、相違点として(4)事象の発生への人間の関与、が得られた。これらを国際会議で討論した。 (2)では、首都圏のある市に在住する一般市民対象の1時点での住民調査データ(n=1396)を再分析し、(1)同じ属性の他者に比べて自己のリスクを低く見積もる楽観バイアス(Weinstein, 1989)が、犯罪被害場面でも顕著にみられ、(2)楽観バイアスが、自転車への錠のかけ忘れなどの不安全行動を媒介し、財産犯の被害可能性を高める可能性を持つことがが示された。さらに、代表性を有する全国調査データ(n=1978)の分析からは、回答者の約4割は自宅訪問者の不用意な対応、約半数は未施錠による外出、約25%は自動車やオートバイのエンジンキーをつけたまま車から離れる、といった犯罪被害につながる不安全行動を取っていることが明らかになった。これらから、犯罪対処行動を調査法で測定することの目途が確立した。 (3)では、自転車盗難防止のための2つ以上の錠の装着(ツーロック)を題材とし、実務で使用されている防犯情報を収集・整理し、脅威情報と対処行動の情報を操作した刺激を作成した。
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