2011 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪に備えるために:二重過程理論に基づく犯罪対処行動の促進
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22730497
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
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Keywords | 犯罪被害 / 説得的コミュニケーション / 二十過程理論 / 統計的因果推論 / 縦断分析 / 予防 / 脅威アピール / 不安全行動 |
Research Abstract |
本研究では、一般市民の日常的な犯罪への備えである犯罪対処行動を促進させる要因を明らかにするため、日本の実情に応じた犯罪対処行動尺度の作成、調査法を用いた犯罪にまつわる認知・感情・行動の因果関係の分析、実験法による犯罪対処行動の促進要因の分析を行う。 本年度は、(1)防犯場面での不安全行動の観察研究、(2)犯罪対処行動の促進に関するフィールド実験、(3)一般市民対象の社会調査をそれぞれ実施した。 (1)では、首都圏の鉄道駅付設の公共駐輪場12箇所で、(1)駐輪自転車の施錠状況、(2)所定時間に出庫する自転車のひったくり防止カバー着用状況をそれぞれ観察した。そのうち(1)では、自転車の未施錠率は1.4%にとどまったものの、ツーロック(2つ以上の錠)の設置率(21.3%)と利用率(13.1%)との間のギャップから、施錠の促進について心理学的手法を用いた介入が有効であることが示唆された。 (2)では、首都圏の鉄道駅付設の公共駐輪場利用の成人女性を対象に、防犯情報を操作したひったくり防止カバーの配布実験を行った。実験群、統制群の1要因実験参加者間計画であり、実験群では、ひったくり被害の脅威と防止カバーの正しい使用法を、統制群では無関係な情報を伝えた。平日夕方に駐輪場に来場した利用者に、2名1組の実験者が、ひったくり防止カバーの装着を打診し、応諾した参加者には、刺激を含むA4・4ページの質問紙冊子への回答を求める間に、作業員が実験参加者の自転車にひったくり防止カバーを取り付けた。事後の防止カバーの装着率を観察するとともに、約50日後にアンケート調査を実施した。 (3)では、首都圏の1市に住む成人男女を対象に、郵送法によるアンケート調査を行った。質問に用いた冊子はA4・12ページであり、質問項目は、犯罪被害、犯罪不安、リスク認知、防犯活動への接触、安全行動・不安全行動、ライフスタイル、デモグラフィック要因とした。合わせて実施の対象者が住む地区の犯罪地図を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査法、実験法による研究ともに遅滞なく進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引きつづき研究計画に沿って調査法、実験法による研究を進める。当初計画では、個人の犯罪への積極的に備えである犯罪対処行動にもっぱら着目していたが、1年目の被害実態調査で、犯罪に対する備えの欠落である不安全行動の存在が明らかになったため、分析対象に加える。最終的に、公衆の犯罪に対する備えの実態やその欠落に関係する要因を社会調査で明らかにするだけではなく、フィールド実験によって介入方策を現場に還元することを目指す。
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Research Products
(6 results)