2012 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪に備えるために:二重過程理論に基づく犯罪対処行動の促進
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22730497
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 犯罪被害 / 説得的コミュニケーション / 二重過程理論 / 因果推論 / 予防 / フィールド実験 / 内容分析 |
Research Abstract |
【防犯情報の種類が対処行動に与える実験(第1実験)の分析】昨年度実施した、公共駐車場でのひったくり防止カバー配布実験の結果を分析した。介入50日後でのひったくり防止カバーの装着率は実験群(脅威アピール)で69.1%、統制群で57.7%であり、12ポイントほどの差異が生じた。一方、少なくない実験参加者が、介入後すぐに、色やデザインが気に入らないといった理由で自発的にひったくり防止カバーを外していることが明らかになった。犯罪予防実務では、犯罪への備えを普及させるために、行政や警察の担当者がひったくり防止カバーの取り付けを代行するなど導入時コストを負担する場合は多い。しかし、その場合でも行動が持続しないことが示唆された。 【犯罪対処行動と犯罪被害との関連分析】女子大生の犯罪対処行動と犯罪被害に関するアンケート調査結果を分析した。犯罪対処行動の頻度の主成分分析からは、回避、資源動員、知識の3主成分が得られた。また、ライフスタイル(深夜帰宅)を含めて、各主成分得点と被害との関連をみたところ、ライフスタイルによって、被害防止に有効な方略が異なってくることが示唆された。 【既存の防犯情報の分析】全国各地で実地に使用されている防犯チラシ(ひったくり、振り込め詐欺、性犯罪、侵入盗等)を収集し、その内容を分析した。同種の犯罪であっても、チラシによって想定する受け手も異なっており、想定される受け手によって、イメージで関心を喚起する、被害リスクを統計情報で伝える等の情報提示の方略が異なっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、1)日本の実情に応じた犯罪対処行動尺度の作成、2)2波の社会調査による、犯罪をめぐる認知・感情・行動の因果関係の同定、3)脅威認知・恐怖感情を操作した防犯情報の提示実験による、犯罪対処行動の促進要因の同定の3つを主目的にしている。1)に関しては、当初想定していた成人男女のみならず、被害の脆弱性が高い女子大生や、不適応対処が懸念される親密な関係者間の暴力の被害者等、当初予想しなかった対象層のデータを取得し、当初の計画以上の進展といえる。2)に関しては、東日本大震災の影響から一般市民対象の調査時期が先送りとなったが、当初計画の調査デザインは確保できる見通しである。3)に関しては、当初の予想を越え、全国約30都道府県で実地に用いられている防犯情報を入手できたことにより、実験準備に時間を要する一方、より妥当性の高い情報提示実験が可能となった。以上を総合すると、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は最終年度であり、当初計画に沿って研究を継続する。被害直後の反応と対処行動意図との関連分析、認知・感情・行動の因果関係の分析を進めるとともに、研究全体のまとめを行う予定である。
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Research Products
(3 results)