Research Abstract |
意図せず,自動的・自発的に,他者の行動から特性を推論する自発的特性推論(Spontaneous Trait Inference ; STI)については,これまで社会心理学において成人を対象として検討されてきたが,子どもを対象とした研究はほとんどない。また,日本人を対象とした研究は,申請者の行っている研究を除いて皆無である。そこで初年度である22年度は,幼児・児童のSTI測定法を開発するための基礎として,日本人児童および成人におけるSTIの生起形態を調べた。 具体的には,児童106名,大学生187名を対象として,2つの集団実験を行った。他者のポジティブな特性を暗示する行動記述文と,ネガティブな特性を暗示する行動記述文では,提示されたときに特性が自発的に推論される傾向が異なるかどうかを調べた。さらに,その特性価(ポジティブかネガティブか)の要因による影響は,他の要因,例えば普段の生活での観察されやすさ(起こりやすさ)によって説明されえるのか同課について検討した。結果より,成人のみならず児童(小学5年生)においても,自発的特性推論は十分観察されること,ただしその効果はネガティブな特性を暗示する行動記述文を提示したときのみ生じることが明らかになった。また,ネガティビティバイアスに関する研究ではしばしば,特性価ではなく起こりやすさという代替要因によって,その現象が説明されうると考えられてきたが,起こりやすさの要因はSTIには影響しないことが示唆された。さらに,自らの判断の確信度評定という測定法は,メタ認知能力が十分に発達していない児童には適さないことが示唆された。 加えて,昨年度まで実施したSTIの発達に関する実験データを分析し,『心理学研究』の清水(2010)論文「小中学生と大学生における自発的特性推論」として発表した。
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