2010 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動計測を用いた発達障害児の視覚刺激処理に関する検討
Project/Area Number |
22730503
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
関口 貴裕 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90334458)
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Keywords | 教育系心理学 / 発達障害 / 読み書き障害 / 眼球運動計測 / 文章理解 / 視覚的注意 / 特別支援教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,読み書き障害児が文字・文章を読む際の視線の動きを眼球運動計測で調べ,心理テスト等では知ることのできない,彼ら・彼女らの視覚情報処理の特徴を明らかにすることであった。平成22年度は,以下の2つの研究を行った。1)読み書き障害児8名が漢字(偽漢字)を覚える際の視線の動きを計測し,その注視パタンを健常児10名のそれと比較した(前年度に取得したデータの再分析)。その結果,健常児では,漢字のどの領域を長く見るかが文字により異なるのに対し,読み書き障害児では全ての文字で一貫して左上領域の注視時間が長くなっていた。この結果から,読み書き障害児が文字に応じて見方を変えるのではなく,どの文字も同じように見ていることが明らかとなった。2)読み書き障害児12名を対象に,文章を読む際に視覚的注意を向けることのできる範囲,すなわち「読みの有効視野」の広さを「移動窓法」により調べ,それを健常児12名と比較した。移動窓法とは,画面中の対象児が目を向けた点の周囲にのみ文字を表示する方法であり,この表示範囲の操作による注視回数やサッカード距離の変化を通じて,読みの有効視野の広さを推定する。実験の結果,健常児では表示範囲が6文字に制限された条件ですでに,視野制限のない条件と比べた場合のサッカード距離の短縮が見られたのに対し,読み書き障害児では表示範囲が3文字になって初めてサッカード距離の短縮が見られた。この結果は,読み書き障害児の読みの有効視野が健常児のそれに比べ狭いものであることを意味している。これらの成果は,読み書き障害児に対し,どのような読み書きの指導を行えばよいかの指針となる情報を呈するものである。
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