2011 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動計測を用いた発達障害児の視覚刺激処理に関する検討
Project/Area Number |
22730503
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
関口 貴裕 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90334458)
|
Keywords | 教育系心理学 / 発達障害 / 読み書き障害 / 眼球運動計測 / 文章理解 / 視覚的注意 / 特別支援教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,読み書き障害児が文字・文章を読む際の視線の動きを眼球運動計測で調べ,心理テスト等では知ることのできない彼ら・彼女らの視覚情報処理の特徴を明らかにすることであった。この目的のために平成23年度は,以下の2つの研究を行った。 1.読み書き障害児の視覚的注意スパン(一目で見える範囲において同時に処理可能な文字の量)を瞬間提示された数列を報告する課題で調べた。また,各対象児の視覚的注意スパンの大きさと文章音読課題の眼球運動データ(平均サッカード距離,注視回数,平均注視時間)および推定有効視野との関係を検討した。その結果,読み書き障害児の視覚的注意スパンが健常児のそれに比べ小さいこと,および読み書き障害児の視覚的注意スパンが読みに関わるいずれの測度とも強い相関を示すことが見いだされた。これらの結果から,読み書き障害児では,視覚的注意スパンの小ささに起因する単語処理単位の小ささが中心視における処理負荷を高め,そのことが一因となって周辺視野におよぶ注意の広さ=有効視野を狭くしている可能性が示唆された。 2.大学入試センター試験における発達障害者の特別措置(時間延長措置)が妥当なものであるか検証するために,青年期の読み書き障害者3名を対象に,センター試験問題文を読む際の読みの特徴を眼球運動計測により調べた。その結果,読み書き障害者では健常者に比べ読み返しが多く,このために注視回数の増大および読みの遅さの問題が生じていること,および読み書き障害者には過剰に読みが早く,そのために理解が追いつかないという問題を抱える者もいることが見いだされ,試験における時間延長措置の妥当性が支持された。
|