2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730504
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 亜矢 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (10571432)
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Keywords | 描画 / 認知心理学 / 発達 / 概念 / イメージ |
Research Abstract |
絵を描くことの認知的な基盤について、概念イメージの生成や解体との関連に着目して認知心理学的な実験研究をおこなっている。とくに(1)なぐりがきから記号的な表象画(具体的な物を描く)への移行期、および(2)記号的な描画に対する写実的な描画という2つのフェーズに着目することで、描くことの認知的なメカニズムにアプローチする。当該年度は、(1)に関して、なぐりがきから表象画への移行期のヒト幼児に出現する「さかさ絵」についての実験研究をまとめ、論文として発表した。「さかさ絵」は顔などの向きのある表象を倒立や90度回転した向きで描く現象であり、これまでにその実態やメカニズムについては知られていなかった。そこで、代表者らが続けてきた複数のヒト幼児を対象とした3年間の縦断的なデータから自発的な「さかさ絵」の発生頻度を明らかにした。また「さかさ絵」を誘発する刺激図形を提示した描画実験をおこなうことにより、この時期の幼児が方向に依存しない描画空間を持っていることを明らかにし、そのメカニズムについて考察をおこなった。 (2)に関しては、写実的に描くことと概念イメージの解体との関連について検証するため、デッサンの熟練者と非熟練者のヒトおとなを対象に、倒立図形、図地反転図形、錯視図形などの刺激図形を用いた模写課題を実施した。液晶タブレットPCを用いて刺激を提示し描画過程を記録するとともに、アイトラッカーを用いて描画中の視線の動きを記録した。現在これらのデータの解析を進めている。 また、これまでの研究結果を紹介した著書(共著)を執筆し、現在印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より勤務地を異動したため、ヒト幼児を対象としての新たな実験はあまりおこなえていないが、ヒトのおとなを対象とした研究に関しては、当初の予定では入れていなかったアイトラッカーを導入したため、予定以上に充実したデータを収集することができている。粛々と解析をすすめ、まとめていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)に関して、チンパンジーとヒト幼児を対象としたこれまでの研究成果を論文にまとめる。(2)に関して、昨年度おこなったタブレットとアイトラッカーをもちいた描画実験のデータを解析し、研究をまとめる。また昨年度から準備している(3)描画行動の原初的な動機づけについての研究をすすめる。描画と同じく自己報酬的な行動としての「遊び」に着目し、2つの行動とその動機づけの共通点を探るため、飼育下のチンパンジーを対象として実験観察をおこなう。これらの結果を順次まとめ、発表をおこなう。
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