Research Abstract |
本研究は,拡大化・多様化を続ける生活環境が児童期の子どもたちの発達に及ぼす影響について,そのロングスパンのプロセスやメカニズムを横断的・縦断的分析により明らかにすることを目的としている。この目的に基づき本年度は,1.生活環境と子どもの発達との関係を検討のための横断的・縦断的解析,2.縦断調査に登録しているサンプルを対象とした質問紙調査の実施,という2つの課題を設定し研究を進めた。 第一の課題の達成のために,これまでに収集したデータの整理を行なうとともに,生活環境のなかでも最も子どもに近位な養育者と子どもの発達との関係の検討を実施した。具体的には,養育者自身の変化や子どもの結果変数との関わりを分析すると同時に,この関係性における養育者自身の状態を規定する潜在的な要因としての居住環境の役割についても検討した。さらに,乳児・幼児期の家庭における養育環境の質についても,横断的・縦断的な分析を行なった。第二の課題は,縦断調査の実施である。本年度は,小学校3年生の子どもを持つ家庭を対象とした郵送による質問紙調査を実施した。当該調査により,養育者の精神的・身体的健康状態,養育態度,親子関係,養育者の環境設定力・調整力,家庭環壌の混乱度,家庭内の教育環境,メディア環境,家庭の社会経済的状態,住居や地域に対する満足感,家族の生活スケジュール,子どもの精神的・身体的健康状態,学習状況,習いごとなどの学校外活動,学級内の混乱度や家庭の教育・文化的環境など,多側面にわたるデータを収集した。さらに今年度は新たに,居住環境への愛着や困りごとに関する詳細な調査項目を加え,居住環境について多側面から捉えることを可能にするデータも収集した。本年度の調査の主たる意義・重要性として,児童期の子どもたちと家族をとりまく生活環境について,多面的かつ重層的な内容のデータを収集できたことが挙げられる。
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