2011 Fiscal Year Annual Research Report
「自分のことばによる説明」が学習理解を促進する過程
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22730507
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
角谷 詩織 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (90345413)
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Keywords | 小学生 / 説明活動 / 理解深化 / 学習意欲 / 学校適応 |
Research Abstract |
本研究では,授業中の児童による説明活動が学習理解を促す過程及び,理解深化に必要な教師の働きかけや授業構造を明らかにすることを目的とする。小学1年生~6年生を対象に,以下5点の検討を試みる。 (1)学習理解には「自分のことばによる説明」が必要であることを明らかにする。 (2)学年・教科別に説明の壁の特性を明らかにする。 (3)混乱から理解深化へ進展するために必要な教師の働きかけや授業構造を明らかにする。 (4)授業での非発言者の理解深化過程を明らかにする。 (5)授業での理解過程と学力・学習意欲・学校適応へのつながりとを明らかにする。 本年度は,小学校4~6年生の算数,理科の授業観察を通して,主に(2),(3)の検討を試みた。 観察結果から,以下の点が見出された。説明の場面として,大きく3つの場面によって児童の説明が異なる。説明場面として,場面I:クラス全体へ説明することが求められる場面,場面II:教師の指示により説明の時間が設けられたうえで,少人数の友だち同士で説明する場面,場面III:友だち同士やグループ単位での活動の中で自然発生的に説明する場面に分類することができた。場面IIIでは,言語以外の説明ツール(教科書,実験道具,筆記用具)を用いることが多く,また,言語としては,「これ」「それ」等の代名詞も多用され,文章としては不完全な説明が多かった。また,非説明者とのやり取りが頻繁にみられた。場面IIでは,言語以外の説明ツールとしては,自身の描いた図や教科書やプリントの図を指さすことが多用されたが,言語による説明が主となる。非説明者は,説明者の説明を最後まで聞くことが多かった。場面Iでは,説明は主に言語によりなされ,黒板に書かれた図などは,補足的に用いられる。場面IIや場面IIIで理解できていると推測される児童も,場面Iで十分な説明ができるとは限らないため,どのスタイルの説明が理解を反映しているのかをされに検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健康上の理由。
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Strategy for Future Research Activity |
授業中の説明場面において,特性の異なる場面が見出された。それぞれの説明場面における説明と児童生徒の理解状態との関連をさらに明らかにしたい。 研究対象として,これまでは,小学4年生以上を中心に検討したため,今後は,小学3年生以下を対象とした研究も開始したい。 さらに,授業中に説明を行わない児童の理解状態,言語能力についての把握が困難であったため,今後は,ノートや作文等を通して,書き言葉による言語表現と理解深化や学校適応との関係を明らかにしたい。 本年度および次年度以降の研究成果を日本心理学会等で発表したい。
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