Research Abstract |
昨年度に単一事例から探索した不随意的回想の実態の一般化可能性を探るべく,本年度では一般市民向けカウンセリング講座の受講者に協力を募り,40代~60代の28名から協力を得て,個別面接法によって回想を収集した(第1回面接調査)。質問項目は調査対象者に共通するボランティア経験を中心とし,それと関連するライフヒストリーも併せて聴取した。その結果,一部の調査対象者は,面接中の語りを契機に,不随意的な回想が生じていたことを報告していた。そして,個別面接法後に,日誌法による不随意的回想の収集の協力を募り,22名から協力を得て,約1週間後の第2回面接調査時に日誌を回収した。日誌の記録期間は連続する1週間とし,記録数は各日3個を上限とした。日誌の記録項目は,大別して「思い出した時の状況」と「思い出した出来事」とした。前者には,その日時,場所,行為,回想のきっかけ,回想中やその後の気分が含まれる。後者には,その出来事の時期と内容が含まれる。第2回面接調査では,日誌の記録内容を口頭で補足してもらったほか,第1回面接調査の事後的影響などを尋ねた。日誌法の結果のうち,回想頻度については,記録期間内の1週間の毎日に3個ずつ回想を記録した者もいれば,日によってはまったく回想を記録していない者もいるなど,個人差が大きかった。また,回想内容の記録量の個人差も大きい。さらには,個人差のみならず,個人内,すなわち調査対象者が置かれている生活状況による回想の変動も大きいことが示された。たとえば,調査対象者が調査時に,対人関係上の悩みや人生設計上の転機に臨んでいると,それがいわばライフ・テーマとして回想の頻度や内容に影響していた。次年度では,この暫定的な分析結果について,定量的・定性的な分析を加え,より詳細で確実な結果を得る見込みである。今年度の研究実績は,従来,未解明であった中年期から高齢期にある人々の日常的な回想の実態を示すものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果に鑑みて,次年度では,海外動向調査を実施する。また,本年度までは,研究課題のうちでも,「不随意的」回想に焦点を当ててきたが,次年度は,やはり課題に掲げている「協同的」回想に焦点を当てる予定である。そのため,次年度末までには,本研究課題の計画全体が遂行される見通しである。
|