2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730516
|
Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
小泉 嘉子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (80447119)
|
Keywords | 心的動詞 / あいまい性 / メタ言語 |
Research Abstract |
本研究は、「あいまいな表現をあいまいなまま理解する」といった「あいまい性の理解」の発達過程を明らかにするために、心的動詞表現の持つ「あいまい性」がどのように理解されるようになるのかについて、2つのあいまい性の点から調査を行うことを目的としている。 [研究成果]2010年度の研究より、あいまいさを表す文末表現の確信度評定は、(1)組み合わされる命題の未知・既知、(2)命題を提示する主体(発話者)の種類、という2つの要因によって確信度が変化することが予想された。そこで平成23年度(2011年度)は、この2点について質問紙調査により再検討を行った。具体的には、大学生を対象に2種類の質問紙調査を行い(調査4:2011年8月、調査7:2012年1,月に実施)、(1)組み合わされる命題の未知・既知、(2)命題を提示する主体(発話者)の種類、という2つの要因が確信度判断に影響を与えることを明らかにした。また、同様の傾向が子どもにも見られるのかを確認するために、予備調査として小学校4・5・6年生を対象とした2種類の質問紙調査を行った(調査5・6:2011年8月~9月に実施)。予備調査の結果から、一部の子どもに大人とは異なるあいまいさ(確信度)判断を行う子どもが見られた。この予備調査の結果については、日本発達心理学会第23回大会(2012年3月9日名古屋)にて発表を行っている(補足:本予備調査は、学内共同研究ワークショップ(尚絅学院大学共同研究2009~2010年度)の質問紙調査の一部に、回答の練習問題として挿入して実施している。そのため、学会発表原稿には科学研究費による研究としての記載を行っていない)。また、2010に実施した大学生対象の質問紙の結果(調査3)は、日本心理学会第76回大会(2012年9月11日~13日神奈川)にて発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、表計算ソフトであるExcel内にあるVBAプログラムを利用し個別式の実験調査を行う予定であった。しかし、調査参加者への負担を軽減するために、調査方式を個別式から集団式へ変更することにした。そこで本年度計画では、2010年~2012年の大学生を対象とした調査を踏まえ、クリッカーシステムを使用した一斉調査システムを作成することに方向転換を行うことにした。クリッカーシステムは0~9のボタン押しによってリアルタイムに調査参加者の回答を収集しフィードバックすることが可能である。また、小学生にも操作が容易であり集団を対象にした一斉調査に適している。そこで2012年度は、この方針転換のために大人・児童の双方に使用可能なクリッカーシステムを用いた多重尺度法の開発を行うために、大学生を対象にした質問紙調査とクリッカーを用いた集団調査を行う。この調査結果をもとに2012年度中旬~後半にかけて小学生を対象とした調査を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
2010年度~2011年度の調査結果より、子どもの回答に「命題を提示する主体(発話者)の種類」の影響が見られた。これはメタ言語理解の指標である「抽象語の理解」の発達の要因によるものでなく、神尾(1998)の情報のなわ張り理論に見られるような、会話における情報の所属である「なわ張り」を子どもがどのように認識し提示文を判断しているかに関わるものと考えられた。そこで2012年度は追加の調査項目として、大学生を対象に(1)「命題を提示する主体(発話者)の種類」によってこの「情報のなわばり」をどう認識しているのか、(2)「情報のなわばり」認識とあいまいさ評定は関連しているのか、について検討を行う。また、この結果をもとに(3)子どものあいまいさ理解について検討を行う。
|