2010 Fiscal Year Annual Research Report
視線誘導が自閉症スペクトラム児の表情認知に及ぼす効果の実験心理学的検討
Project/Area Number |
22730520
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
木村 あやの 昭和女子大学, 生活心理研究所, 助教 (00527575)
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Keywords | 発達障害 / 表情認知 / 視線運動 |
Research Abstract |
本研究は、自閉症スペクトラム児の表情認知における注視部位について基礎データを収集し、さらに自閉症児の表情認知スキルを向上させる手がかりとして、表情画像の目への視線誘導の有効性を実験的に検討することを目的としている。 平成22年度は、まず定型発達者を対象として主に2つの研究を行った。具体的には、(1)表情のみの刺激を用いた、特性共感と表情認知との関係(2)人物の表情を含むTAT (Thematic Apperception Test)図版への視線運動に関する検討であった。 (1)では、自閉症スペクトラム児に困難とされる「心の理論」に関係する特性共感と表情認知との関係について検討した。Ekman et al.(2002)によるFACS (Facial Action Coding System)の定義で"怒り"、とされる表情について、定義どおり"怒り"であると答えた群は、それ以外の感情を選択した群よりも、感情的共感特性も認知的共感特性も高い傾向がみられた。また、"喜び"表情を強く認知する傾向は、女子では共感性と負の関係があるのに対し、男子では正の関係にあり、この結果から、共感性と感情認知の関係には性差があり、男女別に考慮する必要性があると推測された。 (2)では、TAT物語作成時の視線運動を注視点計測装置で測定した。その結果、500ms以下という短い時間で、人物の顔を中心に視線が集まり、さらにその後、図版中の人物の視線が向いている先へ視線が移ることが実験的に示された。また、図版中の顔を注視する時間は、その他の部位を注視する時間よりも長く、顔や表情は定型発達者にとって状況を理解するための重要な手がかりとなっていることが示唆された。一方、人物の顔が含まれていない図版に対しては、顔が含まれている図版よりも、参加者が共通して注視する部位が少なかった。 これらの結果をもとに、平成23年度は自閉症スペクトラム児を対象に研究を実施する。
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