2010 Fiscal Year Annual Research Report
教師の生成する言語化の認知メカニズムと実践的知識の学習に関する研究
Project/Area Number |
22730521
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
伊藤 貴昭 北陸大学, 未来創造学部, 講師 (20550445)
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Keywords | 教育心理学 / 教師 / 言語化 / 実践的知識 / 認知メカニズム |
Research Abstract |
授業場面における教師の説明と生徒の反応の関係を解明するため,中学校で実施された数学授業を対象に分析した。反省的実践家としての教師の特徴として,授業で直面する問題状況を適切に表象し,それを解決するための実践的知識を持っていることが挙げられる。本研究では,熟練教師を対象にその認知メカニズムを解明することが目的である。研究では,授業前の予測と実際の生徒の反応が異なる場面,具体的には生徒の誤解や誤答が表出する場面を認知的葛藤場面として捉え,即興的な対応とその後の授業への生かし方の特徴を抽出した。その結果,熟練教師は葛藤を解消するために柔軟な対応を取れること,そして後続する別クラスの授業において,その知識を活用していることなどが明らかになった。このことは,教師の実践的知識がいかに蓄積されていくのかという教師の発達過程にも関連するものであり,教師の熟達過程の一端を示しているといえよう。なお,分析対象となった授業は中学1年生の最初の学習分野「正負の数」である。小学校から中学校への移行期に表れる算数から数学へという接続の問題について熟練教師が何を考え,どのように授業を行っているかについても分析しているが,これについては現在進行中である。 いずれにしても,教師が直面する葛藤状態が解消される認知メカニズムがモデルとして提出できるほどには分析が及んでいないため,今年度の研究によってそれを明らかにすることが目的となる。昨年度,新たなデータを収集できるよう教師に承諾を得たため,ビデオを通した研究者からの一方的な分析だけでなく,実際の授業者である教師のインタビューを加え,一般化可能なモデルの構築を目指していく。
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