2012 Fiscal Year Annual Research Report
アタッチメント安定性に対する養育者要因の影響プロセス:主観・行動・適切性の検討
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22730527
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
篠原 郁子 愛知淑徳大学, 心理学部, 講師 (30512446)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 発達心理学 / 親子関係 / 乳児期 / アタッチメント / mind-mindedness / 縦断研究 / 母子相互作用 |
Research Abstract |
本研究は,子どもの安定型アタッチメントを予測する社会的環境として,乳児期から幼児期にかけて母親の特徴を複数測定し,それらの相互関連性と,アタッチメント予測力の比較を行うことを目的としている。 本年度は,縦断的研究計画に基づき,生後32ヵ月段階での第3回調査の実施を開始した。これは,第1回目の生後6ヵ月時調査,第2回目の20ヵ月時調査に続き,調査対象者への追跡調査として実施したものである。第3回調査では,20分間の母子自由遊び場面の観察,ならびに,アタッチメントの安定性測定(AQS)を行った。 第3回調査の実施と同時に,第1回,第2回調査で得られたデータについて分析を実施した。子どものアタッチメント安定性を予測する可能性がある母親側の変数として,生後6ヵ月時の第1回目調査で測定した 「乳児への心的帰属傾向」(mind-mindedness;MM)は,同時期の母子自由遊び場面の観察に基づき評定された 「母子の情緒的やりとりにおける調和」(Emotional Availability:EA)と,一部相関することが認められた。生後20ヵ月時には再び母子相互作用を観察し,EAを評定したが,生後6ヵ月時のMMと,生後20ヵ月時のEAには,母親個人内における有意な連関は認められなかった。なお,生後20ヵ月時は子ども側の発達について,アタッチメント安定性とも関連が指摘されているふり共有能力の実験を実施した。子どものふり共有能力には,生後6ヵ月時の母親のMMと,生後20ヵ月時のEAとの関連が認められた。 母親側の変数間,ならびに,子どもの発達との関連パターンについて,変数の測定時期による差異が認められたことが注目された。子どものアタッチメント安定性への予測力に関して,今後,母親のある特徴のみならず,それが測定された時期にも注意を払いながら検討することの重要性が示唆されたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縦断的な追跡調査の計画に基づき,研究1~3年目に予定していた生後6ヵ月時の初回調査,その後の追跡調査を順調に進めている。当初予定をしていたサンプルサイズを満たすことが課題であるが,随時,研究協力者を募集することで,現在までに30組前後の親子を対象とする調査を実施している。 なお,確実な調査実施のために,2回目以降の調査実施時の月齢を生後20ヵ月,生後32ヵ月に調整した。これらの調整を経て,各月齢時における調査と分析について,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,乳児期から幼児期に亘る追跡調査に特徴を持ち,その性質上,調査は各対象者の月齢に沿って順次実施している。サンプルサイズの確保の点から,随時調査協力者を募集したため,本年度は第3回目調査実施と並行して,本年度内に20ヵ月となった子どもを対象とする第2回調査の実施も進めている。最終的な生後32ヵ月時のデータ収集は研究4年目内で終了することを目的としている。 継続的なデータ収集に重点をおいた研究活動の過程で,得られたデータの得点化,分析に関しては優先的に分析を進める変数を選定するなどの工夫を講じたい。また,インタビューデータ,観察データの逐語録作成等の作業については,専門業者の利用などにより効率化を図りたい。 なお,本研究で得られる母子相互作用の縦断データは貴重であると考えられる。アタッチメントを予測すると予想される母親の行動上の特徴に関して,国際的に用いられている分析方法を用いるべく,海外での講習を受講することで,母親の特徴を記述する有効な分析方法の習得に努めたいと考える。
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