2011 Fiscal Year Annual Research Report
児童臨床場面におけるフィンランド式キッズスキル導入のための効果測定研究
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22730537
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 俊太郎 信州大学, 教育学部, 准教授 (10548233)
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Keywords | キッズスキル / ソリューション / 効果測定研究 / ブリーフセラピー / 遊戯療法 / 児童臨床 |
Research Abstract |
本研究は,フィンランド国内の児童臨床場面で普及している,キッズスキルと呼ばれる新たなカウンセリング技法の効果測定ならびに,心理教育技法としての効果測定を行なうことで,我が国の教育現場,福祉現場における心理的問題を抱える子どもへの適用可能性の検討を目的としている。 平成23年度は、平成22年度で研究・調査目的の前倒しが図れた(申請書に記載の研究目的(1)カウンセリングとしての有効性の検証、(2)心理教育としての有効性がおおむね検証され、仮説が立証できた)ため、キッズスキルの効果そのものに関する議論をさらに深化させ、効果をもたらすメカニズムについての研究を中心に行った。これを行うことにより、単純に効果があるというエビデンスを示すだけではなく、今後この技法を発展・応用する際に核となるスキルやコミュニケーションのポイントがどのようなものであるかを明らかにすることが目的であった。 上記目的を達成するために、(1)複数事例をTEM(Trajectory Equifinality Model)と呼ばれる手法によってまとめ、キッズスキルやソリューション・フォーカスト・アプローチ(キッズスキルの理論的基盤となっている手法)の効果の多様性を示し、その効果機序を予想する質的研究を行い、さらに(2)そこから得られた仮説をもとに、効果機序を検証するための社会心理学的手法を用いた実験研究を行った。 (1)では、キッズスキルが経験者に対して生活上のポジティブな行動変容をもたらす可能性が示された。また、この変容は、Fredriksonらの提唱する「拡大-構築理論」によって説明できると考え、同様の現象を確認するために(2)では、キッズスキルやソリューション・フォーカスト・アプローチが継続的な肯定的行動変容を引き起こす可能性が実験から明らかとなった。 以上のように、キッズスキルは実際にカウンセリングや心理教育として効果的であり、さらにその効果は拡大-構築理論に基づくポジティブ感情の意図的喚起やリフレーミングから生じることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究目的の(1)、(2)はおおむね仮説どおりであることが初年度と今年度前半でほぼ明らかにされたため。また、この進展を受けて、さらに効果測定を推し進めた効果機序の解明について研究が進んでおり、学術論文としての執筆作業が進められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた研究よりも進捗状況が早まり、執筆に使用するデータはほぼ集積されたと言える。そこで、今後はこれまで集積されたデータを学術論文として作成し、論文投稿を行う。また並行して、学術論文として投稿する内容について、心理臨床関係の学会において発表を行う。予定よりも多くの研究成果が見込める状況のため、当面は申請書類に記載された目的を優先し、それらの成果をまとめることを目標とする。本年度中にすべての業績をアウトプットすることが目標となる。
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