2011 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児の養育者における自閉症広域表現型の日本語版評価法の開発に関する研究
Project/Area Number |
22730543
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 佐枝子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (20456924)
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Keywords | 自閉症特性広域表現型BAP / 養育者 / 対人関係 / コミュニケーション |
Research Abstract |
自閉性障害児を持つ養育者や家族、親族において自閉性障害の診断基準は満たさないものの、自閉症特性における広域表現型(BAP:Broad Autism Phenotype)を有する者がいることが指摘され、こうした特徴を持つ者の認知特性には自閉性障害者のそれと類似する。対人関係場面で適応しにくくその特性に気づかれないことでうつなどの2次障害に発展することもある。したがってBAP概念を明確にし、支援のあり方を整備することは重要といえる。そこで本研究では、BAPを抽出できる質問紙尺度の邦訳版(BAPQ-J)を開発すること、そして認知的特性の特徴を検討することを目的に質問紙調査と認知機能課題調査を実施した。BAPQ(Hurley, et.al., 2007)の邦訳版開発研究では、自閉性障害児を持つ養育者(臨床群81名)と発達に課題を抱えていない子どもを持つ養育者(コントロール群116名)の解析結果から、BAPQの3下位尺度;aloof, Pragmatic language, Rigidおよび総得点における信頼性係数はα=.73~.83と高く、また下位尺度間相関もr=.39~.55と有意な相関関係が認められた。基準連関妥当性については、自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ)との間に有意な強い相関(r=.50~.74)が確認された。次に原著者と検討しAQを外的基準(AQのM+1.5SD)として便宜的にBAP有無の2群を設定し、BAPQの3下位尺度得点の差を検討した結果、すべてにおいてBAP有群の方がBAP無群に比して有意に得点が高かった。以上のことから、BAPQ-Jは邦訳版の妥当性、信頼性が確認されたといえよう。次に、表情や動作から感情や人への信頼度を判断する認知機能課題調査では、自閉性障害児とその養育者16組とコントロール群18組についてデータ収集を終え、予備分析からは自閉性障害児の方が目からの情報で感情を読み取ることが苦手であること、また怖いという感情についての認知が弱いことなどが示唆されている。今後被験者数を増やして、親子における特徴も含めて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BAPQ邦訳版(BAPQ-Jの妥当性検証に関する調査研究については、データ収集を終了し現在、原著者と最後の翻訳内容の確認を行っており、最終段階に入っている。また認知課題に関する研究ではデータ収集を行いつつ、予備分析を行い、臨床群とコントロール群間における差異が認められる結果が得られているなど大幅な方向性の修正を必要としない状況で研究を進めている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
BAPQ邦訳版(BAPQ・Jの妥当性検証に関する調査研究については、研究発表のための論文執筆を鋭意進める。 認知課題に関する研究では、引き続き臨床群、コントロール群のデータ収集をすすめつつ、十分な解析ができるよう4月までにはデータ収集を終了し、解析と執筆に入る。
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