2012 Fiscal Year Annual Research Report
学生の自殺予防におけるコミュニティ・モデルの有用性に関する研究
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22730545
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
杉岡 正典 香川大学, 保健管理センター, 講師 (70523314)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自殺予防 / 大学生 / 心理教育 |
Research Abstract |
本研究は,大学生の自殺防止策を構築するために,大学カウンセラーが行うコミュニティ心理学的立場から実践的研究を行うことが目的である。我が国では,自殺予防に関する様々な試みがなされている。行政レベルでは,とりわけ中高年の自殺者数が多いことから,自殺予防は,中高年のうつ病対策の面が重視される。大学においても,学生のうつ病対策という枠組みで自殺予防が実施されることが多いが,その一方で,青年期である大学生に特有の心理を考慮した自殺予防策も必要だと思われる。そこで,本研究では,大学を1つのコミュニティと見立てて,その援助力を高めるための自殺予防教育に関する研究や青年期心性を検討するために希死念慮のある学生に関する研究を行ってきた。 H24年度では,大学生の自殺予防に関する心理教育を実施するための予備調査として,大学生18名を対象に,自由記述式のアンケート調査を実施した。大学生の自殺予防において,身近に相談できる相手の有無は自殺の大きな予防因子となる。そこで,実際に大学生は,友人から「死にたい」と相談を受けた場合に,どのような気持ちが生じ,どのようにふるまうのか,についてその実態を調査した。その結果,「どうして死にたいと思うのか相手の話を聞く」「一緒に解決策を考える」などの行動をすると回答したものが多かった。また,その時の気持ちは「びっくり」「悲しい」「つらくなる」が多かった。これらのことから,大学生は,友人から相談を受けた際,友達の助けになろうとするが,自分たちだけで問題を解決しようとする(専門家や他の大人に相談することを思いつかない)傾向があること,相談を受けた学生自身にも大きな動揺が生じることが推察できた。この結果をから,自殺予防の心理教育を行う際には,友人からの相談を受けた際に,どのような対応が求められるのかについて,具体的な内容を含めることが必要だと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,大学生の自殺予防のために,コミュニティ心理学的立場から実践的研究を行うことが目的である。具体的には,大学生の自殺問題とストレス対処方略及び援助要請行動の関連を明らかにする,学生の自殺予防に関する現状と課題,具体的なニーズを明らかにし,教職員の役割及び保健管理センターとの連携について検討する,学生相談におけるカウンセリング・コンサルテーション過程を分析し,学生の自殺予防における保健管理センターとの連携・協働について検討する,ことを目的としている。 方法として,質問紙調査,心理教育的介入,事例研究があるが,現段階において,質問紙調査と事例研究はほぼ計画通りに進んでいる。心理教育的介入については,予備調査が終了した段階であり,最終年度に,実施する予定である。したがって,研究計画としては,おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,初年度から行ってきた希死念慮のある学生に対する心理的支援の事例研究を学会または学術雑誌に発表し,結果の考察をさらに精緻化したい。事例研究では,すでに発表の許可を得た事例がある。希死念慮のある学生との面接において,心理相談実施者に不可避的に湧き起こる独特の感情について吟味し,彼らの面接において,いかに学生の発する「助けを求めるサイン」をキャッチしていくかという問題を検討していく。 また,心理教育的実践研究では,これまで行ってきた自殺予防のための基礎研究を踏まえて,今年度では,大学生を対象に心理教育を行い,その効果や改善点を検討したい。とりわけ,若者の自殺予防には,困ったときに相談できる仲間の存在の有無が大きな予防因子となる。そこで,教育内容には,自殺に関する知識,自分自身の心の健康管理に関する内容に加えて,身近な友人の不調のサインに気づき,一人で抱えることなく支える方法を含める。実際的には,筆者が担当する講義を受講する学生を対象に,自殺予防に関する心理教育を試み,実施後に,受講生からのフィードバックを得,教育の効果について検討する。 さらに,本年度は,本研究の最終年度に当たることから,これまでの研究の結果を振り返り,その成果と課題について考察し,学会または学術雑誌への発表の準備を行う。
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Research Products
(1 results)