2011 Fiscal Year Annual Research Report
成人期に達した先天性心疾患患者の自立と心理的特徴-発達過程との関連から-
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22730556
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
榎本 淳子 東洋大学, 文学部, 准教授 (50408952)
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Keywords | 先天性心疾患 / 自立 / 心理的特徴 / 成人 |
Research Abstract |
本年度は昨年作成した質問紙調査の実施について、ふたつの調査協力病院の倫理委員会に申請を出し、許可を得た上で実施することができた。実施方法としては患者群に対しては質問紙を郵送および外来で手渡をし、約130名の回答を得ることができた。統制群は、患者群と同年代の成人に対して郵送で実施し、約120名の回答を得た。調査の主な内容は、患者の精神的心理的特徴、発達的特徴、生活状況を把拒できるものとした。現在までの分析結果では、患者群の生活状況としては、80%以上が高校卒業後進学し、全国平均より高い教育程度を有すること、また就業状況としては、患者群は統制群と比較して20歳代後半では常勤職より非常勤職の割合が高いが、30歳代になると統制群と差異がないこと、婚姻状況としては、両群に差異はないが、患者群の女性は結婚後専業主婦になる割合が高いことが示され、自立については概ね統制群と変わりないことが示された。精神的心理的特徴としては、HADSについて対象者の得点を判定区分に沿って分類したところ、統制群のみ20歳代と30歳代を比較した場合有意な差があり、不安、抑うつともに30歳代の方が確診("moderate"もしくは"severe")に分類される患者が増加し、症状なし("normal")に分類される患者が減少していた。患者は年齢とともに不安や抑うつ傾向を有する割合が増加するため、年齢を考慮した精神心理的ケアが必要であるといえる。来年度はこれらの分析をさらに進め、医療関係者の実践に役立つような発表をしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに成人先天性心疾患患者を対象として質問紙調査を作成、実施することができた。質問紙調査においては、その内容について先行研究や面接から得られたデータを参考にし、患者の心理的特徴をよく示すもの、さらに海外での研究結果と比較可能なものを選定した。すでに患者約130名、統制群約120名の回答を得ており、調査の分析についてもかなり進んでいる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は調査の分析をさらに進め、それらの結果を海外の学会を含めて発表し、論文にまとめることを目標としている。そのためにまずは調査の分析方法を工夫することが重要である。特に海外の研究結果と比較可能でかつ医療関係者の実践に役立つような結果をまとめることが求められている。
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