2010 Fiscal Year Annual Research Report
心理援助の専門家に対する援助要請促進のための教育プログラムの開発と評価
Project/Area Number |
22730557
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
永井 智 立正大学, 心理学部, 講師 (20513170)
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Keywords | 臨床心理学 / 援助要請行動 / 被援助志向性 |
Research Abstract |
本年度の目的は、今後の介入プログラムに用いるメンタルヘルス・リテラシー尺度を作成することであった。しかしながら本年度、中根・吉岡・中根(2010)らによってメンタルヘルス・リテラシー尺度が発表された。そこで本年度は計画を変更し、今後の研究のために理論的な基礎を提供するための研究を行った。 援助要請の規定因を明らかにするための研究は、近年増えつつあるが、援助要請に影響するパーソナリティ要因については検討が不十分であることが指摘されている(永井,2010)。 そこで本研究では、パーソナリティ要因として愛着に注目し、2つの研究を行った。研究1では、従来の援助要請明らかにされている生起過程における、愛着の影響を明らかにすることを目的とした。大学生を対象に質問紙調査を行った結果、愛着の不安は悩みの経験量を媒介して援助要請を促進する一方、愛着の回避はソーシャルサポートを媒介して援助要請を抑制する傾向が示された。これは、愛着に関する諸理論とも整合する結果である。研究2では、愛着と援助要請のスタイルとの関連を明らかにすることを目的とした。大学生に対する質問紙調査の結果、他者に依存的に援助要請を行う者は、愛着の回避が低く、自らの悩みとうまく距離がとれていないこと、自律的に援助要請が可能な者は、悩むことによる肯定的な側面が認知できていることが明らかになった。愛着は、他者からサポートを獲得する上で非常に重要なパーソナリティ変数であるが、愛着と援助要請との関連は、国内外においてもほとんど研究されてこなかった。本研究では、愛着が援助要請に与えるについて、先行研究で明らかにされてきた主要な媒介変数と関連させながら明らかにしたという点で、大きな意義があるものであり、援助要請における理論的な基盤を提供するものであると考えられる。 なお本研究は、次年度以降学会発表および論文として投稿予定である。
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