Research Abstract |
平成22年度は,摂食障害および食行動異常予防に係る心理的支援法(以下,プログラム)の開発とプログラム実施効果について予備的検討を行うことが目的であった。ここでは,(1)Acceptance and Commitment Therapy(以下,ACT)の方法論を採用し,先行研究を参考に“身体像不満足感の円環性”を断ち切ることを目的としたプログラを開発した。また,(2)開発したプログラムを予備的に実施し,問題点を改善するとともに身体像不満足感およびAEBの低減効果(短期的効果)を検討した。 (1)では,複数のプログラムを開発し,これらの適用可能性について,支援対象者となる学生から評価を受け,修正しながら適正化した。また,実施内容や実施時間・回数,実施環境などについて精査・調整を行った。加えて,プログラムで利用する支援ツール(アプリケーションを用いた視覚的教材)を作成し利便性を検討した。 (2)では,(1)で開発したプログラムおよび支援ツールを用い,実際に支援を実施することで,プログラムの効果を予備的に検討した。複数の女子学生グループを対象に,先行研究に基づき,身体像不満足感の強化に係る公的自己意識の変化や,公的自己意識と有意な関連性を有する不安状態について検討した結果,プログラム実施後,高い公的自己意識および状態不安は有意に低減する結果が認められた。この結果から,本プログラムを体験することで,摂食障害や食行動異常に影響を及ぼす強い身体像不満足感が低減する可能性が期待できる。 現在,学校精神保健の場において,予防教育を実施する体系的・実証的な方法論は少なく,また,支援対象者の評価を受け開発されたプログラムも少ない。本研究の成果である開発プログラムは,より体系的であり心理的侵襲性も低く,今後,効果的支援の可能性を広げるものであるといえる。
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