2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730570
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
児玉 恵美 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (80435156)
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Keywords | 臨床心理学 / 心的境界 / 精神病理 / 芸術 |
Research Abstract |
1.研究目的 刺激に影響されやすいことが一方で精神病理に、一方で創造的な活動に結びつくのはなぜか、「心的境界」の側面から明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、芸術家にインタビュー調査と心理検査を行うことで、創造的な活動に心的境界がどのように関係しているのか質的に検討した。 2.研究方法 国内で活躍している芸術家を調査対象とし、インタビューと心理検査を行った。インタビューは半構造化面接で行われ、発話内容を創造的な活動と心的境界との関連を中心にまとめ分析した。心理検査ではロールシャッハ・テストを施行し、片口法にてスコアリングを行った。 3.研究成果、 創造的な活動と心的境界との関連が考えられることとして、インタビューからは、(1)夢や実際の生活場面で体験したことに影響を受けやすい、(2)作品制作にはひらめきと綿密なリサーチおよび校正の繰り返しが必要、(3)自分の中にさまざまな感情があることを認識しつつそれらが共存することに対し寛容、(4)実生活の中で体験しながら同時にそれを客観視している、(5)自分の感情体験を他の何かに置き換えることで表現している、(6)創作活動は孤独な作業だがそれを社会に出すことで閉ざされた世界から現実的な世界へと出て行くことができる、(7)曖昧なものを曖昧なものとして置いておける、(8)作品が社会に出ることで自分の感覚や価値観が携える罪悪感や孤立感が解放される、などが見られた。心理検査からは、観念活動が活発で想像力に富み、繊細な感受性や内省力・表現力を携えていること、自分自身への関心が高い、などの特徴が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在活躍している芸術家に調査を依頼し実施する際、彼らの創作活動や発表の時期との兼ね合いで、当初予想していた以上に、調査実施日時の設定に苦慮しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き芸術家である対象者を増やし調査を実施する。その後、臨床群に対する心理面接過程から抽出された精神病理に関係していると思われる心的境界の特徴と、芸術家の創造性に寄与すると考えられる心的境界の特徴を質的に比較検討する。
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