2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730578
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
光松 秀倫 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 助教 (40377776)
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Keywords | 実験心理学 / 視覚 / 因果関係 / 行為 / 力 |
Research Abstract |
行為には、身体運動の左右方向など、視覚の空間方向と共通の概念がある一方、力の概念など視覚化されにくい概念がある。視覚系と運動制御系の空間概念の相互作用を検討した従来研究において、視覚は行為を促進し、行為は視覚を抑制することが報告されている(相互作用の非対称性)。本研究の目的は、力の概念の処理に関しても、この非対称性がみられるかどうかを検証することであった。実験参加者は、仮想現実空間環境で、目の前に静止した三次元物体を右手の指で押して動かした。この時、同時に別の物体がこの静止物体に衝突した。実験参加者は、自身の行為と衝突物体のそれぞれについて、静止物体が動いたこととの因果関係を評定した。その結果、視覚的衝突物体の出現は行為の因果評定値に影響しなかったが、行為は衝突物体の評定値を低下した。すなわち、視覚系と運動制御系の相互作用の方向によって、相互作用の影響の仕方が異なることが分かった(非対称性)。ただし、空間概念のように、作用方向が異なると促進が抑制になるほどの強い非対称性は見られなかった。また、統制実験として、実験参加者が行為を行うのではなく、他人の行為を観察する条件ではこの非対称性は見られなかったことから、この非対称性にとって、行為の視覚的側面でなく、筋運動指令、触覚的側面が重要であることが示唆された。空間概念に関する従来の視覚と行為の相互作用の研究では、視覚系と運動制御系で空間表象の符号化が共通化されていると主張されている(Prinz,2003)。しかし、力の概念の処理では、空間概念とは相互作用のあり方が異なっていることから、空間概念と同様の処理過程を論じることはできない。本来、力は非視覚的な概念であるため、視覚系では符号化することができず、一定の視覚刺激条件が満たされれば、運動制御系で符号化された力の概念が活性化されると考えられる。
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