2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳波の位相同期性解析およびグラフ理論解析を用いた視覚的注意の評価手法の開発
Project/Area Number |
22730596
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
武田 裕司 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (10357410)
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Keywords | 脳波 / 位相同期 / グラフ理論 / 認知 / 注意 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳波の位相同期性解析を用いて、注意の制御様式を評価する手法を確立することである。過去の研究から高γ帯域=受動的注意制御、低γ帯域=能動的注意制御の仮説を支持する結果は得られていたが、直接的な証拠は視覚探索課題で確認されているのみであった。そこで本年度は、先行手がかり課題、ストップシグナル課題、注意の瞬き課題などを用いた脳波計測実験を行い、仮説の検証を試みた。中央実行系の強い能動的制御が必要とされるストップシグナル課題では、ストップシグナル反応時間(SSRT:平均反応時間から平均シグナル潜時を引いた時間)が短い参加者と長い参加者の比較を行った(個人間比較)。その結果、SSRTが短い参加者では、標的提示から400-500ミリ秒後に低γ帯域の強い位相同期が観察された。また、能動的な抑制が見落としの主たる要因と考えられている注意の瞬き課題では、見落としが生起した試行と正答した試行の比較を行った(個人内試行間比較)。その結果、見落としが生起した試行では、RSVP提示中の低γ帯域において強い位相同期が観察された。これらの実験結果は、低γ帯域の位相同期が能動的注意制御に関与しているという仮説を支持している。その一方で、先行手がかり課題では仮説と一致しない結果が得られた。受動的注意制御が優勢とされる周辺手がかり課題と能動的注意制御が優勢とされる中心手がかり課題の比較を行った(個人内課題間比較)。その結果、手がかりの提示から300-500ms後に、低γ帯域では周辺手がかり課題の位相同期が強く、高γ帯域では両課題間に有意な差異は認められなかった。この結果は、仮説とは逆であり、同期の周波数帯域と注意制御様式との関係は当初想定していたほど単純なものではない可能性を示している。
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